機関紙『東京YWCA』

東京YWCAでは、会員向けに、年11回機関紙を発行しています。
ここでは、内容の一部をご紹介します。

機関紙『東京YWCA』 No.827(2026年8月号)

どの命も大切にする神と共に
―崩壊した司法に声を上げ続ける私たち

       片岡輝美(会津放射能情報センター代表、子ども脱被ばく裁判の会共同代表、
            宗教者が核燃料サイクル事業廃止を求める裁判原告事務局)

 2026年6月15日、約千人の市民が最高裁判所を取り囲み、「6.17判決」への抗議と正当な判決を求める声をあげました。今年で3回目となる最高裁包囲行動です。
 2011年3月、東京電力福島第一原子力発電所核災害によって環境に放出された高濃度放射性物質は日本の国土、世界につながる海を広く酷く汚染し、住民のかけがえのない暮らしを根こそぎ奪い、その苦しみは今なお続いています。
 核災害後、全国で起こされた原発訴訟は30件以上、原告も1万3,000人を超えると言われています。その中の4つの訴訟(生業訴訟、千葉訴訟第一陣、愛媛訴訟、群馬訴訟)に対し、2022年6月17日、最高裁は「原発事故に国の責任はなし」との判決を出しました。実はこれらの訴訟は高等裁判所において4件とも東電に責任があり、群馬訴訟を除く3件でも国にも責任があるとの判決でした。つまり、核災害の9年前の2002年、国の機関である地震調査研究推進本部が出した長期評価から太平洋沿岸に大津波が来ることを知りながら、国は東電に津波対策を命じていなかったと断じたのです。
 これに対し最高裁第2小法廷の菅野博之裁判長ら3人は「仮に(国が)津波対策を命じたとしても、想定を超える津波だったので、事故は防ぎえなかった可能性が高い」として国の責任を否定する判決を出しました。三浦守判事は国に責任があるとの詳細な意見を書きましたが、その後の原発訴訟ではこの「6.17判決」のコピペ判決が続くようになりました。
 ジャーナリスト・後藤秀典さんは丹念な取材から、菅野裁判長はこの判決の直後に退任し「巨大法律事務所」の特別顧問に就任するなど、最高裁と法律事務所、国、東電が密接な関係にあることを指摘し続け、「これで本当に公正公平な判決ができるのか」と疑問を呈しています。
 著書『ルポ・司法崩壊』には更に衝撃的な証言を記しています。後藤さんに直撃取材された巨大法律事務所のベテラン弁護士はこう答えました。「(最高裁小法廷に所属する判事)3人とも何が正義かということに対してあまり見解を持っていない。人権や正義のことに全然関心がない。」「最高裁判事は事務所の宣伝になるからやっていこうということでなっているわけです」。人権に関心がなかったのは、大企業専門の代理人として頻繁に改正される法律やガイドラインに追いつくのに超多忙だったからとの理由です。
 今年の最高裁包囲行動も軽快な音楽と響き渡る和太鼓で開会。11の団体がアピールし、参加者全員が「原発事故は国の責任!原発事故は人権問題!司法の独立、どこいった!三権分立、どこいった!未来に誇れる判断を!」との声を上げ、手をつなぎ「人権の最後の砦」であるはずの最高裁を取り囲みました。
 私は当日の総合司会を担当。マイクを握り、コーラーに続いて声を張り上げていました。心は怒りと悲しみでいっぱい。でも「どの命も神の目には尊い」との聖句も繰り返し思い起こしていました。
 原発回帰を強行する国政や被害者を救済しない司法を担う人々には強力な権限が与えられています。弱者の痛みや嘆きに目もくれない強者に対する怒りは、正当な謝罪と反省がない限り収まることはありません。
 ですが、その強者の命も放射能によって傷つけられていいはずはない。ましてやその子どもも、そのあとに続く命も被ばくしてはいけないのです。「父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださる」と、神はどの命も大切にする方であると聖書が語るからです。
 分断による嘆き、対立による憎しみがますます大きくなる社会で平和を作り出すのは不可能に思えます。でも、イエス・キリストは私たちの罪を贖う(あがなう)ためにご自身の命を差し出した。それほどに私たちに希望を持ち、私たちを諦めていないのです。その思いに応える者となりたいと思います。

                 

              

 

バックナンバー

2026年7月号 自然エネルギー100%社会は見えている.pdf(竹村英明)

2026年6月号 奪われゆく日常、削り取られる魂―あなたに伝えたい沖縄の現実―.pdf    (山城莉乃)

2026年5月号 憲法記念日に思う 自分事として.pdf(内山佳子)

2026年4月号 イースターメッセージ 壁は崩され、蓋は砕かれるのだから.pdf(吉髙 叶)

2026年3月号 「夜明け前」なのか? ―エネルギー政策の逆走.pdf(横山由美子)

2026年1 月号 年頭にあたって 120周年を越えて、その先へ.pdf(尾﨑裕美子)

2025年12月号 クリスマスメッセージ 彼女の代わりにイエスを抱く.pdf(渡邊さゆり)

2025年11月号 被爆80年から核廃絶へ-「核兵器をなくす日本キャンペーン」の挑戦.pdf(浅野英男)

2025年10月号 小さな願いを受け止めて社会につなげる―東京YWCAのきょうだい児支援のこれまでとこれから―.pdf(五十嵐菜々子)

2025年8月号 戦争の時代に女性の権利を考える.pdf(清水奈名子)

2025年7月号  若い女性へのメッセージ「隣人と共にいきるという生き方」.pdf(公文和子)

2025年6月号 基地のそばで暮らすということ.pdf(平和と正義委員会 チーム月桃の会)

2025年5月号 「社会を理想に近づける努力~憲法を活かそう」.pdf(伊藤千尋)

2025年4月号 イースターメッセージ 復活の命の光.pdf(南 望)

2025年3月号 国際女性デーにあたって 現代の『隣人』ー日本に暮らす外国籍の女性支援の中から.pdf(新倉久乃)

2025年1月号 年頭にあたって 平和をつくりだす人々とともに.pdf(坂口和子)

2024年12月号 クリスマスメッセージ「飼い葉桶に生まれたイエスさま」.pdf(福永保昭)

2024年11月号 聖書に親しむ.pdf(左近豊)

2024年10月号 呉市で海上自衛隊「巨大で多機能な複合防衛拠点設置」案急浮上.pdf(永冨彌古)

2024年8月号 「平和の礎」に刻まれた名前の叫び.pdf(島しづ子)

2024年7月号 <人間としての羞恥>に向き合うことを求めてきたパレスチナと反憲法的行為.pdf(清末愛砂)

2024年6月号 戦雲に覆われる日本列島.pdf(三上智恵)

2024年5月号 憲法記念日に思う.pdf(齊藤小百合)

2024年4月号 イースターメッセージ「二人は走る」.pdf(松本敏之)

2024年3月号 パレスチナ問題から考える「人間の姿」と「日本の立ち位置」.pdf (桃井和馬)

2024年1月号 年頭にあたって 『核』否定の思想に立つ.pdf(坂口和子)

2023年12月号 クリスマスメッセージ 悲しみのさらに向こう.pdf(友野富美子)

2023年11月号 クリスマスと音楽.pdf(竹内智子)

2023年10月号 今はもう「茶色の朝」になっている.pdf(渡辺一枝)

2023年8月号 ウクライナ避難者から教えられたこと.pdf(横山由利亜)

2023年7月号 原発の本当の怖さ.pdf(小倉志郎)

2023年6月号 YWCAは魅力的なところ.pdf(遠藤久江)

2023年5月号 憲法記念日に思う 真の性売買禁止法の制定を.pdf(角田由紀子)

2023年4月号 イースターメッセージ イエスの平和(その2).pdf(廣石望)

2023年3月号 座談会 ユースに聞く、性と生殖に関する自己決定とYWCA.pdf

2023年1月号 「全力ハイブリッド」で次のステージへ「対話の灯を」点火しましょう!.pdf(山本知恵)

2022年12月号 クリスマスメッセージ 世界の隅で起こったこと.pdf(マリア・グレイス笹森田鶴)

2022年11月号 性と生殖に関する健康と権利.pdf(雀部真理)

2022年10月号 イエスの平和.pdf(廣石望)

2022年8月号 被爆77年。過去を見つめ、未来を考える―広島YWCAのいま.pdf     (中澤晶子)

2022年7月号 平和の種をまく.pdf (内山佳子)

2022年6月号 「お花畑」を笑う者は「焼け野原」をもたらす.pdf(中野晃一)

2022年5月号 第38回憲法カフェ 岸田政権と自民党憲法改正案.pdf

2022年4月号 イースターメッセージ「えっ、こわい」 .pdf(有住航)

2022年3月号 国際女性デーにあたって 国連女性の地位委員会(CSW)とYWCAのかかわり.pdf (根本博子)

2022年1月号 年頭にあたって 平和の器とならせてください.pdf(栗林(坂口)和子)

2021年12月号 クリスマスメッセージ 夜明けは近い.pdf (井口 真)

2021年11月号 キリスト教教育が大切にしているもの.pdf (西原廉太)

2021年10月号 聖書が語る希望.pdf

2021年8月号  足元から平和をつくる.pdf (樋口さやか)

2021年7月号 コロナ禍に生きる女性と子ども.pdf (大日向雅美)

2021年6月号 平和創造~野尻湖から辺野古へ~.pdf (金井創)

2021年5月号 憲法記念日に思う 私にとってのキリスト教基盤.pdf (幕谷安紀子)

2021年4月号 イースターメッセージ 敗者の復活.pdf (堤 隆)

2021年3月号 「留学生の母親」運動 現在・過去・未来.pdf(八星恵子)

2021年1月号 年頭にあたって それでも心を高く.pdf (川戸れい子)

2020年12月号 クリスマスメッセージ マリアの歌.pdf(柳下明子)

2020年11月号 コロナ禍でDVを引き起こしているものとは.pdf(丹羽麻子)

2020年10月号 拡大ひととき礼拝 平和を実現する人々は、幸いである.pdf(ランデスハル)

2020年8月号 原爆投下75周年の広島に身を置いて.pdf(湊晶子)

2020年7月号 地球温暖化と私たち.pdf (山内恭)

2020年6月号 憲法記念日に思う 個の尊厳を奪われた存在が象徴であるということ.pdf (齊藤小百合)

2020年4月号 イースターメッセージ 倒れても大丈夫.pdf (吉岡康子)

2020年3月号 生かされている喜び―問題だらけの社会で―.pdf(太田尚子)

2020年1月号  世界に仲間たちと共に目指す、2035ビジョン.pdf(藤谷佐斗子)

2019年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスの光.pdf(東彩子)

2019年11月号 韓国で「わたし」と向き合いながら.pdf(長尾有起)

2019年10月号 「日米同盟」とは何か.pdf (川戸れい子)

2019年8月号 昨日に変わらぬ今日、今日に変わらぬ明日.pdf (鈴木伶子)

2019年7月号 権力者から私たちの時間を取り戻そう.pdf (石井摩耶子)

2019年6月号 「命(ぬち)どぅ宝」―わたしは命である―.pdf (神谷武宏)

2019年5月号 憲法記念日に思う 「憲法を議論せよ」.pdf (島昭宏)

2019年4月号 イースターメッセージ 慰めと希望のイースター.pdf (高橋貞二郎)

2019年3月号 講演会「世界の核被害」.pdf

2019年1月号 年頭にあたって 寛容でありたい.pdf (川戸れい子)

2018年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスを迎えるために.pdf (瀬口哲夫)

2018年11月号 講演会「BC級戦犯を知っていますか?」.pdf

2018年8月号 そこに「痛み/悼み」はあるか.pdf (金迅野)

2018年7月号 対決ではなくて、対話こそが平和を作る.pdf (楊志輝)

2018年6月号 沖縄と憲法.pdf (金井創)

2018年5月号 憲法記念日に思う ー改憲的護憲路運について.pdf (高木一彦)

2018年4月号 復活?.pdf (秋葉晴彦)

2018年3月号 国際女性デーを記念して.pdf (藤原聖帆、山口慧子対談)

2018年1月号 年頭にあたって この道を、ためらわず.pdf (実生律子)

2017年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスの光と闇.pdf (鈴木育三)

2017年11月号 「共に生きる」ということ.pdf (田中公明)

2017年10月号 知っていますか? 外国人労働者の問題.pdf (鈴木伶子)

2017年8月号 戦争・暴力の反対語は、平和ではなく対話です.pdf (暉峻淑子)

2017年7月号 天皇の「おことば」は天皇制に生かされるか.pdf (吉馴明子)

2017年6月号 米軍基地と沖縄.pdf (糸洲のぶ子)

2017年5月号 憲法記念日に思う バーニー・サンダースの選挙運動に学ぶ.pdf (宇都宮健児)

2017年4月号 イースターメッセージ からだのよみがえり.pdf (大久保正禎)

 

 

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