機関紙『東京YWCA』

東京YWCAでは、会員向けに、年11回機関紙を発行しています。
ここでは、内容の一部をご紹介します。

機関紙『東京YWCA』 No.754(2019年12月号)


クリスマスメッセージ「クリスマスの光」
    

東 彩子(西南女学院大学短期大学部宗教主事補・保育科講師)

 「その光は、まことの光で、世に来てすべての人を照らすのである。」 ヨハネによる福音書1章9節

 「クリスマス」と聞くと、皆様は何を思い浮かべるでしょうか。

  街を彩るイルミネーション、クリスマスツリー... 風は冷たくても心はふと温かくなり、素朴なキャンドルの光が私たちの心を癒してくれる季節です。住む場所によってクリスマスの風景は様々ですが、私が勤める北九州で唯一のキリスト教主義の女子大では、多くの学生は入学後に初めてクリスマスの意味を知ります。そこで、全学をあげて行うクリスマス礼拝で学生・教職員80人程が奉仕する生誕劇を行い、礼拝を共に作り上げる中でクリスマスについて理解を深める機会を大切にしています。私はその監督として台本を作成し、毎年クリスマスの意味を皆様と共に考える時を過ごしています。

 さて、この生誕劇のハイライトの一つがヘロデ王の宮殿を三人の博士が訪問する場面です。黄金、乳香、没薬という3つの宝を捧げることから「東方の三博士」とも言われ、ユダヤ人が捕囚にあっていたバビロンから来た異教徒の占星術の学者か王であったという説もあります。いずれにしても、ユダヤの信仰とは相対する東方から来た博士たちが、不思議な星の導きによってベツレヘムにたどり着き、イエスを礼拝したことにより、イエス誕生の出来事は一民話ではなく、全世界の人々に開かれた物語とされていきました。日本はまさにキリスト教が普及していない東の国ですから、この役を日本人が演じることは意義深く感じます。

  博士たちは、東方で輝く星を見つけエルサレムを訪問し、ヘロデ王に「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか」と問いました。ヘロデ王は自分以外に王が現れることに不安を覚え、学者たちに調べさせます。そして、救い主がベツレヘムで生まれる預言を知り、博士たちを派遣します。彼らは再び光る星に導かれ、イエスのいる場所に辿り着き、礼拝しました。その後、「ヘロデのところに帰るな」と夢で神からお告げがあったため、王に報告をせずに帰っていきました。イエスを礼拝する前後の博士たちの心には大きな変化が見られます。礼拝後の彼らは、「王の言葉」ではなく、「神の言葉」に従い計画を変更しました。この出来事から、神様は世界の人々に直接語りかけ、神様の働きのために用いられることがわかります。博士たちは、彼らの国の中でも最高の賢者であり、自らの研究や占星術などを信じて生きていたようですが、星を見上げる人生の旅路の中で幼子イエスと出会い、人生の中心が変わる体験をしたのです。

 この物語から2000年程経った私たちの夜空にも同じように星は瞬いています。しかし、人々の心は冷え、国と国との対立は後を絶たず、私たちは互いに壁を作り、ヘロデのように自らと違うものに対する警戒心や恐れに心を騒がせている現実が見られます。博士の物語は、そのような、自分の砦を作る私たちの心の目を「わたしと違う」人々にも同じように神の愛が注がれていること、共に天を見上げるように、と語っているようにも思えます。イエス・キリストの誕生は、創られたすべての者を慈しみ愛される神様の愛が、人種、民族、宗教などのあらゆる「違い」を超えて、すべての人に注がれた喜びの出来事なのです。

 今年のクリスマスは、博士が空を見上げ輝く星を見つけたように、夜空を見上げてみませんか。私たちは人生を旅する小さな存在です。しかし、平和を願う一人ひとりが天を見上げ、神様の愛に照らされる時、夜空の星たちのように、共に世界に希望を届けるものとされていきます。これが、平和への一歩であり、クリスマスの光なのです。台風による甚大な被害、首里城の火災などの大きな悲しみを前にし、自らの小ささを感じると同時に、私たちの小さな祈りが集められ、この地に希望の光を放つことを心より祈ります。


 

 




バックナンバー

2019年11月号 韓国で「わたし」と向き合いながら.pdf(長尾有起)

2019年10月号 「日米同盟」とは何か.pdf (川戸れい子)

2019年8月号 昨日に変わらぬ今日、今日に変わらぬ明日.pdf (鈴木伶子)

2019年7月号 権力者から私たちの時間を取り戻そう.pdf (石井摩耶子)

2019年6月号 「命(ぬち)どぅ宝」―わたしは命である―.pdf (神谷武宏)

2019年5月号 憲法記念日に思う 「憲法を議論せよ」.pdf (島昭宏)

2019年4月号 イースターメッセージ 慰めと希望のイースター.pdf (高橋貞二郎)

2019年3月号 講演会「世界の核被害」.pdf

2019年1月号 年頭にあたって 寛容でありたい.pdf (川戸れい子)

2018年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスを迎えるために.pdf (瀬口哲夫)

2018年11月号 講演会「BC級戦犯を知っていますか?」.pdf

2018年8月号 そこに「痛み/悼み」はあるか.pdf (金迅野)

2018年7月号 対決ではなくて、対話こそが平和を作る.pdf (楊志輝)

2018年6月号 沖縄と憲法.pdf (金井創)

2018年5月号 憲法記念日に思う ー改憲的護憲路運について.pdf (高木一彦)

2018年4月号 復活?.pdf (秋葉晴彦)

2018年3月号 国際女性デーを記念して.pdf (藤原聖帆、山口慧子対談)

2018年1月号 年頭にあたって この道を、ためらわず.pdf (実生律子)

2017年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスの光と闇.pdf (鈴木育三)

2017年11月号 「共に生きる」ということ.pdf (田中公明)

2017年10月号 知っていますか? 外国人労働者の問題.pdf (鈴木伶子)

2017年8月号 戦争・暴力の反対語は、平和ではなく対話です.pdf (暉峻淑子)

2017年7月号 天皇の「おことば」は天皇制に生かされるか.pdf (吉馴明子)

2017年6月号 米軍基地と沖縄.pdf (糸洲のぶ子)

2017年5月号 憲法記念日に思う バーニー・サンダースの選挙運動に学ぶ.pdf (宇都宮健児)

2017年4月号 イースターメッセージ からだのよみがえり.pdf (大久保正禎)

2017年3月号 東日本大震災から6年、東京YWCAの被災者支援の取り組みについて.pdf (池上三喜子)

2017年1月号 新しいタイプの指導者を迎える世界.pdf (ランデス・ハル)

2016年12月号 クリスマス、プレゼントは希望.pdf (上田亜樹子)

2016年11月号 障害があることと、パラスポーツの関係.pdf (橋本和秀)

2016年10月号 遠のく平和を、あきらめずに追い求めよう.pdf (石井摩耶子)

2016年8月号 「平和」の問題以前に「民主主義」を考える.pdf (上村英明)

2016年6月号 教育現場から18歳選挙権を考える.pdf (加藤英明)

2016年5月号 憲法記念日に思う.pdf (武井由起子)

2016年4月号 イースターメッセージ 甦るという奇跡を信じること.pdf (岩村太郎)

2016年2月号 となりびと 若い米兵との出逢い.pdf (砂川真紀)

2016年1月号 年頭にあたって 平和の種をまく.pdf (藤原聖帆)

2015年12月号 クリスマスメッセージ インマヌエルー神はだれと共におられるのか?.pdf (瀬戸英治)

2015年11月号 安全保障関連法の後に.pdf (川戸れい子)

2015年8月号 善悪を見分ける力.pdf (松本敏之)

2015年6月号 選挙が終わって 何が残った?.pdf (川戸れい子)

2015年5月号 「憲法9条」という希望をつなぐ.pdf (斉藤小百合)

2015年4月号 イースターメッセージ  平和があるように.pdf (神﨑雄二)

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