機関紙『東京YWCA』

東京YWCAでは、会員向けに、年11回機関紙を発行しています。
ここでは、内容の一部をご紹介します。

機関紙『東京YWCA』 No.828(2026年10月号)

~民族・階級・性を越えて~
「今こそYWCAのCに立つ時」

      

                         湊 晶子(東京女子大学栄誉教授)

 キリスト教基盤研究室では、7月25日、東京YWCA会館およびオンラインにて、今日の世界情勢でのYWCAの使命について、湊晶子さんを講師に迎えお話を伺い、その要旨をご寄稿いただきました。

 今、世界はユダヤ教を土台としたイスラエル、キリスト教を土台としたアメリカ、イスラム教を土台としたイランが緊張関係にある。このような現代世界の中に生きる者として、「~民族・階級・性を越えて~今こそYWCAのCに立つ時」と題して、次の3点から考えてみたい。

Ⅰ 世界の3つの一神教について
 講演では年表Ⅰ「旧約聖書と歴史(BC)」と年表Ⅱ「キリストと歴史(AD)」(湊晶子編)及びパワーポイントを用いて以下3点について詳しく説明した。
1)ユダヤ教はイスラエルの地に誕生、ヤーウェのみを信仰し、トーラー(律法)を遵守する。ユダヤ教では「イエス・キリスト」を歴史的に予言されてきたメシアと考えないため新約聖書は認めない。選民であるユダヤ民族は神から与えられた戒律を守る限り、救世主(メシア)が現れ救済されるという信仰を現在も持ち続ける。AD135年にローマ帝国下でエルサレムから追放され、「離散のユダヤ人・ディアスポラ」となり、1948年パレスチナの一部にイスラエル国家が成立されるまで続いた。
2)キリスト教は、イエス・キリストを救世主とし、「父なる神・子なる神・聖霊なる神の三位一体」の神を信ずる世界宗教である。旧約聖書と新約聖書を聖典として持つ。
3)イスラム教は紀元7世紀にムハマッド(マホメット)が創始し、コーランに基づきアッラーを信奉する一神教である。

Ⅱ 民族・階級・性の違いを越えて
 東京YWCAは 2026年度のアクションプランに、「平和を実現する仲間のひとりとして学び、参加し、つながろう」をあげておられる。このヴィジョンの実現を心に留めながら聖書から学び、これからの活動に何らかの指針を得ることができれば幸いである。
 熱心なユダヤ教徒でありキリスト者の迫害者であったパウロが、キリスト教に回心し、一世紀ローマの宗教問題、社会問題に大きな影響を与えたことは、新約聖書に残されているパウロの13の書簡から明らかである。特に、世界が直面している社会問題、国際問題への指針を与えているガラテヤの信徒への手紙3章28節に凝縮して示されている。「そこではもはや、ユダヤ人もギリシャ人もなく、奴隷も自由な身分の者もなく、男も女もありません。あなたがたは皆、キリスト・イエスにおいて一つだからです。」人種差別、階級差別、性差別を越えてキリストにあって一つであることが示されている。
 「民族を越え、階級を越え、性を越えてキリストにあって一つです」と言う一世紀におけるパウロのこの言葉は、紛争の多い今こそ大切なメッセージである。ここで「一つ」と訳されているギリシャ語は「エイス」と言う言葉で、一つと言う数を数える言葉ではなく、一人の人を表す言葉であることに注目したい。

Ⅲ 平和を「実現する」、「つくり出す」人に
 マタイによる福音書5章9節「平和をつくる者は幸いです。その人たちは神の子どもと呼ばれるからです。」とある。「平和をつくる者」、「実現する者」と訳されている言葉は、一つの単語(エイレーノポイオイ)というギリシャ語で、新約聖書ではここだけにしか出てこないとても珍しい言葉で、英語ではpeacemakersと訳されている。平和は、それについて知っているだけでは十分ではなく、実際に生活の中でつくり出し、実現しなければならない。
 黒人であれ、白人であれ、アジア人であれ、怪我をすれば同じ赤い血が流れるではないか。平和はどこかからやって来るのではなく、人類一人一人がつくり出さなければならないのである。グローバルに平和をつくり出す人になるためには、英語が話せるだけでなく、自分の発言・行動に最後まで責任を持ち、「平和をつくり出す人」にならなければならない。YWCAの「C」に立った活動に期待したい。

              

 

バックナンバー

2026年8月号 どの命も大切にする神と共に.pdf(片岡輝美)

2026年7月号 自然エネルギー100%社会は見えている.pdf(竹村英明)

2026年6月号 奪われゆく日常、削り取られる魂―あなたに伝えたい沖縄の現実―.pdf    (山城莉乃)

2026年5月号 憲法記念日に思う 自分事として.pdf(内山佳子)

2026年4月号 イースターメッセージ 壁は崩され、蓋は砕かれるのだから.pdf(吉髙 叶)

2026年3月号 「夜明け前」なのか? ―エネルギー政策の逆走.pdf(横山由美子)

2026年1 月号 年頭にあたって 120周年を越えて、その先へ.pdf(尾﨑裕美子)

2025年12月号 クリスマスメッセージ 彼女の代わりにイエスを抱く.pdf(渡邊さゆり)

2025年11月号 被爆80年から核廃絶へ-「核兵器をなくす日本キャンペーン」の挑戦.pdf(浅野英男)

2025年10月号 小さな願いを受け止めて社会につなげる―東京YWCAのきょうだい児支援のこれまでとこれから―.pdf(五十嵐菜々子)

2025年8月号 戦争の時代に女性の権利を考える.pdf(清水奈名子)

2025年7月号  若い女性へのメッセージ「隣人と共にいきるという生き方」.pdf(公文和子)

2025年6月号 基地のそばで暮らすということ.pdf(平和と正義委員会 チーム月桃の会)

2025年5月号 「社会を理想に近づける努力~憲法を活かそう」.pdf(伊藤千尋)

2025年4月号 イースターメッセージ 復活の命の光.pdf(南 望)

2025年3月号 国際女性デーにあたって 現代の『隣人』ー日本に暮らす外国籍の女性支援の中から.pdf(新倉久乃)

2025年1月号 年頭にあたって 平和をつくりだす人々とともに.pdf(坂口和子)

2024年12月号 クリスマスメッセージ「飼い葉桶に生まれたイエスさま」.pdf(福永保昭)

2024年11月号 聖書に親しむ.pdf(左近豊)

2024年10月号 呉市で海上自衛隊「巨大で多機能な複合防衛拠点設置」案急浮上.pdf(永冨彌古)

2024年8月号 「平和の礎」に刻まれた名前の叫び.pdf(島しづ子)

2024年7月号 <人間としての羞恥>に向き合うことを求めてきたパレスチナと反憲法的行為.pdf(清末愛砂)

2024年6月号 戦雲に覆われる日本列島.pdf(三上智恵)

2024年5月号 憲法記念日に思う.pdf(齊藤小百合)

2024年4月号 イースターメッセージ「二人は走る」.pdf(松本敏之)

2024年3月号 パレスチナ問題から考える「人間の姿」と「日本の立ち位置」.pdf (桃井和馬)

2024年1月号 年頭にあたって 『核』否定の思想に立つ.pdf(坂口和子)

2023年12月号 クリスマスメッセージ 悲しみのさらに向こう.pdf(友野富美子)

2023年11月号 クリスマスと音楽.pdf(竹内智子)

2023年10月号 今はもう「茶色の朝」になっている.pdf(渡辺一枝)

2023年8月号 ウクライナ避難者から教えられたこと.pdf(横山由利亜)

2023年7月号 原発の本当の怖さ.pdf(小倉志郎)

2023年6月号 YWCAは魅力的なところ.pdf(遠藤久江)

2023年5月号 憲法記念日に思う 真の性売買禁止法の制定を.pdf(角田由紀子)

2023年4月号 イースターメッセージ イエスの平和(その2).pdf(廣石望)

2023年3月号 座談会 ユースに聞く、性と生殖に関する自己決定とYWCA.pdf

2023年1月号 「全力ハイブリッド」で次のステージへ「対話の灯を」点火しましょう!.pdf(山本知恵)

2022年12月号 クリスマスメッセージ 世界の隅で起こったこと.pdf(マリア・グレイス笹森田鶴)

2022年11月号 性と生殖に関する健康と権利.pdf(雀部真理)

2022年10月号 イエスの平和.pdf(廣石望)

2022年8月号 被爆77年。過去を見つめ、未来を考える―広島YWCAのいま.pdf     (中澤晶子)

2022年7月号 平和の種をまく.pdf (内山佳子)

2022年6月号 「お花畑」を笑う者は「焼け野原」をもたらす.pdf(中野晃一)

2022年5月号 第38回憲法カフェ 岸田政権と自民党憲法改正案.pdf

2022年4月号 イースターメッセージ「えっ、こわい」 .pdf(有住航)

2022年3月号 国際女性デーにあたって 国連女性の地位委員会(CSW)とYWCAのかかわり.pdf (根本博子)

2022年1月号 年頭にあたって 平和の器とならせてください.pdf(栗林(坂口)和子)

2021年12月号 クリスマスメッセージ 夜明けは近い.pdf (井口 真)

2021年11月号 キリスト教教育が大切にしているもの.pdf (西原廉太)

2021年10月号 聖書が語る希望.pdf

2021年8月号  足元から平和をつくる.pdf (樋口さやか)

2021年7月号 コロナ禍に生きる女性と子ども.pdf (大日向雅美)

2021年6月号 平和創造~野尻湖から辺野古へ~.pdf (金井創)

2021年5月号 憲法記念日に思う 私にとってのキリスト教基盤.pdf (幕谷安紀子)

2021年4月号 イースターメッセージ 敗者の復活.pdf (堤 隆)

2021年3月号 「留学生の母親」運動 現在・過去・未来.pdf(八星恵子)

2021年1月号 年頭にあたって それでも心を高く.pdf (川戸れい子)

2020年12月号 クリスマスメッセージ マリアの歌.pdf(柳下明子)

2020年11月号 コロナ禍でDVを引き起こしているものとは.pdf(丹羽麻子)

2020年10月号 拡大ひととき礼拝 平和を実現する人々は、幸いである.pdf(ランデスハル)

2020年8月号 原爆投下75周年の広島に身を置いて.pdf(湊晶子)

2020年7月号 地球温暖化と私たち.pdf (山内恭)

2020年6月号 憲法記念日に思う 個の尊厳を奪われた存在が象徴であるということ.pdf (齊藤小百合)

2020年4月号 イースターメッセージ 倒れても大丈夫.pdf (吉岡康子)

2020年3月号 生かされている喜び―問題だらけの社会で―.pdf(太田尚子)

2020年1月号  世界に仲間たちと共に目指す、2035ビジョン.pdf(藤谷佐斗子)

2019年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスの光.pdf(東彩子)

2019年11月号 韓国で「わたし」と向き合いながら.pdf(長尾有起)

2019年10月号 「日米同盟」とは何か.pdf (川戸れい子)

2019年8月号 昨日に変わらぬ今日、今日に変わらぬ明日.pdf (鈴木伶子)

2019年7月号 権力者から私たちの時間を取り戻そう.pdf (石井摩耶子)

2019年6月号 「命(ぬち)どぅ宝」―わたしは命である―.pdf (神谷武宏)

2019年5月号 憲法記念日に思う 「憲法を議論せよ」.pdf (島昭宏)

2019年4月号 イースターメッセージ 慰めと希望のイースター.pdf (高橋貞二郎)

2019年3月号 講演会「世界の核被害」.pdf

2019年1月号 年頭にあたって 寛容でありたい.pdf (川戸れい子)

2018年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスを迎えるために.pdf (瀬口哲夫)

2018年11月号 講演会「BC級戦犯を知っていますか?」.pdf

2018年8月号 そこに「痛み/悼み」はあるか.pdf (金迅野)

2018年7月号 対決ではなくて、対話こそが平和を作る.pdf (楊志輝)

2018年6月号 沖縄と憲法.pdf (金井創)

2018年5月号 憲法記念日に思う ー改憲的護憲路運について.pdf (高木一彦)

2018年4月号 復活?.pdf (秋葉晴彦)

2018年3月号 国際女性デーを記念して.pdf (藤原聖帆、山口慧子対談)

2018年1月号 年頭にあたって この道を、ためらわず.pdf (実生律子)

2017年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスの光と闇.pdf (鈴木育三)

2017年11月号 「共に生きる」ということ.pdf (田中公明)

2017年10月号 知っていますか? 外国人労働者の問題.pdf (鈴木伶子)

2017年8月号 戦争・暴力の反対語は、平和ではなく対話です.pdf (暉峻淑子)

2017年7月号 天皇の「おことば」は天皇制に生かされるか.pdf (吉馴明子)

2017年6月号 米軍基地と沖縄.pdf (糸洲のぶ子)

2017年5月号 憲法記念日に思う バーニー・サンダースの選挙運動に学ぶ.pdf (宇都宮健児)

2017年4月号 イースターメッセージ からだのよみがえり.pdf (大久保正禎)

 

 

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