機関紙『東京YWCA』

東京YWCAでは、会員向けに、年11回機関紙を発行しています。
ここでは、内容の一部をご紹介します。

機関紙『東京YWCA』 No.783(2022年8月号)

被爆77年。過去を見つめ、未来を考える
 ―広島YWCAのいま
              

                     中澤晶子(広島YWCA会員、子どもの本作家)

 広島に夾竹桃の季節がやってきた。「あの赤い花で当時を思い出す」と修学旅行生に語った被爆者も、その多くが冥界に旅立ち、被爆者の平均年齢は、84歳を超えた。
 歴史は繰り返す。突如、燃えあがった戦火は、今もなお、ひとを、くらしを、大地を焼き、敵味方を問わず若者が未来を絶たれ、家族の涙は枯れることがない。
 今年に入って、3冊の本を再読した。『戦争は女の顔をしていない』『ボタン穴から見た戦争』『アフガン帰還兵の証言』。いずれも、ベラルーシとウクライナにルーツを持つ、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの著作である。女性、子ども、若者。収められた人々の声は、当時と今の間に横たわる時間を、一気に縮める。
 このたび戦争を仕掛けた為政者は、こともあろうに核兵器による攻撃をほのめかした。これに対して、即座に抗議の声を上げたのが被爆者だった。自分たちのような思いは、二度とだれにもしてほしくない。その熱く、深い祈りにも似た思いを抱いた人々は、為政者の暴言を看過できなかった。それは、わたしたち広島YWCAとて同じ思いだった。
 広島YWCAの平和のための活動は、日本YWCAに連なる「ひろしまを考える旅」をはじめ、夕張の子どもたちのための平和プログラム、慰霊碑巡りの学習会(カンナの会)、フィールドワーク、「9」の日の平和公園サイレントアピールなど、広島ならではの軸に沿って行われている。すなわち、今は亡き関千枝子さんをはじめ、多くの被爆者から語ってもらった思い・記憶を、次世代に手渡していく。それがわたしたち広島YWCAの使命と考えている。
 1980年代、広島YWCAにひとつの転機が訪れる。当時、ホストファミリー運動が盛んになり、広島YWCAもマレーシア、インドネシア、中国、韓国からの留学生と交流を持つようになった。そのなかで学んだことが、現在の広島YWCAを支える、もうひとつの軸であり、それが「アジアから見た広島」である。マレーシアの歴史教科書に記述されていたことは、何だったのか。留学生が語る「日本人の知らない、知ろうとしない歴史」を目の当たりにした時、わたしたちの目は、ともすれば忘れがちだったアジア侵略の一大拠点としての「軍都廣島」に向けられることとなった。これらの歴史を見つめ直さずして、被爆の広島のみを語ることは、明らかにおかしい、と学んだのだった。在日韓国人被爆者の渡日治療・被爆者健康手帳取得の支援活動は、こうした学びの中から生まれた。このような観点から、広島YWCAは、今日に至るまで、旧陸軍被服支廠、陸軍の検疫所があった似島などのフィールドワークなども積極的に行い、近隣のYWCAを巻き込んで、その回を重ねている。いずれも、アジア侵略の軍事拠点であり、かつ被爆の歴史を刻む数少ない「現場」である。東京YWCAのみなさんも、広島にお越しの節は、ぜひこれらを見て、感じていただきたいと願っている(喜んでご案内します)。 
 ウクライナの戦火が、どのような形で収まっていくのか見通せない中で、広島・長崎は77年目の「あの日」を迎える。どうすれば、声は届くのか。「平和を実現する人々は幸いである」(マタイによる福音書5章9節)を胸に、わたしたちは広島の声を、世界へ、次の世代へ、確かなものとして手渡していきたいと願っている。

 

                    



バックナンバー

2022年7月号 平和の種をまく.pdf (内山佳子)

2022年6月号 「お花畑」を笑う者は「焼け野原」をもたらす.pdf(中野晃一)

2022年5月号 第38回憲法カフェ 岸田政権と自民党憲法改正案.pdf

2022年4月号 イースターメッセージ「えっ、こわい」 .pdf(有住航)

2022年3月号 国際女性デーにあたって 国連女性の地位委員会(CSW)とYWCAのかかわり.pdf (根本博子)

2022年1月号 年頭にあたって 平和の器とならせてください.pdf(栗林(坂口)和子)

2021年12月号 クリスマスメッセージ 夜明けは近い.pdf (井口 真)

2021年11月号 キリスト教教育が大切にしているもの.pdf (西原廉太)

2021年10月号 聖書が語る希望.pdf

2021年8月号  足元から平和をつくる.pdf (樋口さやか)

2021年7月号 コロナ禍に生きる女性と子ども.pdf (大日向雅美)

2021年6月号 平和創造~野尻湖から辺野古へ~.pdf (金井創)

2021年5月号 憲法記念日に思う 私にとってのキリスト教基盤.pdf (幕谷安紀子)

2021年4月号 イースターメッセージ 敗者の復活.pdf (堤 隆)

2021年3月号 「留学生の母親」運動 現在・過去・未来.pdf(八星恵子)

2021年1月号 年頭にあたって それでも心を高く.pdf (川戸れい子)

2020年12月号 クリスマスメッセージ マリアの歌.pdf(柳下明子)

2020年11月号 コロナ禍でDVを引き起こしているものとは.pdf(丹羽麻子)

2020年10月号 拡大ひととき礼拝 平和を実現する人々は、幸いである.pdf(ランデスハル)

2020年8月号 原爆投下75周年の広島に身を置いて.pdf(湊晶子)

2020年7月号 地球温暖化と私たち.pdf (山内恭)

2020年6月号 憲法記念日に思う 個の尊厳を奪われた存在が象徴であるということ.pdf (齊藤小百合)

2020年4月号 イースターメッセージ 倒れても大丈夫.pdf (吉岡康子)

2020年3月号 生かされている喜び―問題だらけの社会で―.pdf(太田尚子)

2020年1月号  世界に仲間たちと共に目指す、2035ビジョン.pdf(藤谷佐斗子)

2019年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスの光.pdf(東彩子)

2019年11月号 韓国で「わたし」と向き合いながら.pdf(長尾有起)

2019年10月号 「日米同盟」とは何か.pdf (川戸れい子)

2019年8月号 昨日に変わらぬ今日、今日に変わらぬ明日.pdf (鈴木伶子)

2019年7月号 権力者から私たちの時間を取り戻そう.pdf (石井摩耶子)

2019年6月号 「命(ぬち)どぅ宝」―わたしは命である―.pdf (神谷武宏)

2019年5月号 憲法記念日に思う 「憲法を議論せよ」.pdf (島昭宏)

2019年4月号 イースターメッセージ 慰めと希望のイースター.pdf (高橋貞二郎)

2019年3月号 講演会「世界の核被害」.pdf

2019年1月号 年頭にあたって 寛容でありたい.pdf (川戸れい子)

2018年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスを迎えるために.pdf (瀬口哲夫)

2018年11月号 講演会「BC級戦犯を知っていますか?」.pdf

2018年8月号 そこに「痛み/悼み」はあるか.pdf (金迅野)

2018年7月号 対決ではなくて、対話こそが平和を作る.pdf (楊志輝)

2018年6月号 沖縄と憲法.pdf (金井創)

2018年5月号 憲法記念日に思う ー改憲的護憲路運について.pdf (高木一彦)

2018年4月号 復活?.pdf (秋葉晴彦)

2018年3月号 国際女性デーを記念して.pdf (藤原聖帆、山口慧子対談)

2018年1月号 年頭にあたって この道を、ためらわず.pdf (実生律子)

2017年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスの光と闇.pdf (鈴木育三)

2017年11月号 「共に生きる」ということ.pdf (田中公明)

2017年10月号 知っていますか? 外国人労働者の問題.pdf (鈴木伶子)

2017年8月号 戦争・暴力の反対語は、平和ではなく対話です.pdf (暉峻淑子)

2017年7月号 天皇の「おことば」は天皇制に生かされるか.pdf (吉馴明子)

2017年6月号 米軍基地と沖縄.pdf (糸洲のぶ子)

2017年5月号 憲法記念日に思う バーニー・サンダースの選挙運動に学ぶ.pdf (宇都宮健児)

2017年4月号 イースターメッセージ からだのよみがえり.pdf (大久保正禎)

 

 

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