機関紙『東京YWCA』

東京YWCAでは、会員向けに、年11回機関紙を発行しています。
ここでは、内容の一部をご紹介します。

機関紙『東京YWCA』 No.735(2018年3月号)

国際女性デーを記念して

毎年3月8日は国際女性デー。女性への差別撤廃と地位向上を求める日として、1975年に国連により制定されました。今回国際女性デーを記念して、フェミニズムに関心のあるYWCAのユース、藤原聖帆(ふじわら みほ・東京YWCA運営委員)と山口慧子(やまぐち さとこ・日本YWCA職員)が、ジェンダーやフェミニズム、そして若い女性のエンパワメント、YWCAの意義について話しました。


ジェンダーって? フェミニズムって?
藤原 国際女性デーはまだ日本で認知度が低いけど、女性の権利やフェミニズムについて考えるきっかけになっていくといいよね。でも、そもそもフェミニズムとかジェンダーって誤解されがちじゃない?
山口 そうだよね。ジェンダーは「男は仕事、女は家事」や「男は度胸、女は愛嬌」のような、社会や文化の中でつくられた性のこと。それに対してフェミニズムを一言で言うと、個々人で好みや能力は異なっているのに、その多様なあり方を否定して、ジェンダーに基づき優劣関係をつくる社会に対してNO!を突きつける思想や運動のこと。
 ただし、フェミニズムは時代や場所によって変化してきたから、単純化して語るのは危険なんだよね。19世紀には、女性参政権運動に見られるような、男性と平等の市民権を求める運動が行われていたのに対して、その後、男性優位の社会のあり方自体を問い直すフェミニズムも誕生したんだ。この頃には、DVや「男は仕事、女は家事」といった性別役割分業など、家庭内のことだと片付けられてきた問題が、実は社会における男女の不平等な権力関係を反映していることが明らかにされて。その時に「個人的なことは政治的なこと」というスローガンも生まれたんだ。
 また、この3、40年で、主流派のフェミニズムの中で見落とされてきた問題(例えば、有色人女性やセクシュアル・マイノリティの女性に固有の問題)に向き合う流れが生まれてきたんだ。近年のフェミニズムの特徴として、私はインターセクショナルなことが挙げられると思う。インターセクショナリティというのは、一つの社会における、人種や性、宗教、階級、性的志向、障がいの有無などを理由とする差別や抑圧が、相互に関連して生じるということ。例えるなら、安倍政権下において、大多数の女性だけでなく、在日外国人や子どもへの抑圧がさらに強まっているような状況だね。
藤原 社会の中で弱い立場にある人たちに寄り添うYWCAにとっても、インターセクショナリティは大切な概念と言えるね。

「個人的なことは政治的なこと」
山口 ところで、フェミニズムやジェンダーに興味をもったきっかけって何だった?
藤原 大学から共学だったことはきっかけの一つかも。中高が女子校で自分たちのことは自分でするのが当たり前だった環境から、大学では性別役割分業が求められるようになって。学園祭の時に男性はテントの組み立てを、女性は料理の準備を分担させられたことに、「何で?」って疑問を抱いて。その時、「女性はこうあるべき」みたいなステレオタイプを感じた。そういうささいなことから「女性」や「女らしさ」に疑問を抱くようになって、大学院入る時にロングに伸ばしていた髪をバッサリ切った。結局、切っても女のままだったけど、周りの反応が人によって違うことを知れたのは大きな収穫だった。例えば、私の髪型を見て「かっこいいね」という女の子と、否定的な意味で「男の子みたい」という女の子の反応があって、5、6歳なのにジェンダーの刷り込みが強くて驚いた。
山口 若い時って居場所が家と学校だけの人が大半で、得られる情報が限られている分、メディアが発信するジェンダーの刷り込みが強くなりがちだよね。私が子どもだった時も、ピンクが好きだったし、お姫様に憧れたし、大学では文系を選択したし。
山口 個人的なことから政治や社会レベルでジェンダーの問題に関心をもったのは、いつ?
藤原 2015年にタイで行われた世界YWCA総会に参加したことが大きかった。世界YWCAは堂々と、ジェンダー平等の達成をビジョンに掲げていたんだよね。総会では多くの刺激を受けたけど、特に「若い女性のリーダーシップ」に興味をもって、それでオーストラリアのアデレードYWCAに1年学びに行くことを決意した。実際に行ってみると、日本の女性が置かれている現状を客観的に見ることができて、日本でもジェンダー平等のために働きかけていく必要性を感じたよ。
山口 なるほど。個人的な経験からしか政治的な問題への気づきは生まれないのかもね。個人的な違和感とか、当たり前だと思っていた事柄を丁寧に考え直していくことが、若い女性のエンパワメントを進めていく際に、重要なのかも。

女性のエンパワメント理論
山口 話は少しずれるんだけど、学生時代、「社会運動を通じた女性のエンパワメント」について調べていたことがあるの。その時に、カナダ国際開発庁やユニセフといった国際機関でも用いられている、サラ・ロングウェの「女性のエンパワメント・フレームワーク」について知ったんだ。そこでは、女性のエンパワメントには①基本的ニーズの充足、②アクセス、③意識化、④参加、⑤コントロールが必須だとされていた。そして、①から⑤が全て満たされると、女性が大きくエンパワーされたと見なされるんだ(表参照)。
 それで藤原さんの話に戻ると、③の意識化が、ターニングポイントになったんじゃないかと思って。個人的な出来事や世界YWCA総会への出席がきっかけで獲得した③の意識化を経て、④にあたるアクションを実施しているし、意思決定機関の運営委員として活動していることは⑤に関わるよね。もちろん、私自身がいま現場で働いていると、一人ひとりのエンパワメントのあり方や方法をそう単純化できないとも感じるけど、③の意識化のプロセスに丁寧に寄り添うことで、その後の④行動や⑤コントロールが、自発的に行われる可能性が高くなるのではないかな。
藤原 YWCAの特徴の1つは、会員運動ということだよね。トップダウンで上からの指示に従って動くんじゃなくて、地域YWCAっていう現場で一人ひとりが問題意識を育てて、足元から変化を起こしていく草の根形の運動は、③の意識化を効果的に実施できる運動のあり方なのかも。

私が思うYWCAの意義
山口 私がすごいな、って思うのは、多くの世界的なリーダーが社会問題に関心をもったきっかけに、若い時のYWCAとの出会いを挙げていること。プムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長も、その一人なんだって。中高生と共に学びやアクションができるNGOって少ないから、貴重だと思う。
 また、若い女性や少女の団体だからこそ、セーフスペースを確保していくことの意味も大きいと感じる。奨学金問題やリベンジポルノ、いじめなど、若い女性を弱い立場におとしめる社会的な課題はとても多いよね。彼女たちが安心して過ごせ、一人ひとりの声がきちんと聞かれる場所を守ることは、この暴力社会の中でできる重要な平和活動だと思う。
藤原 そうだね。あと、若い女性や少女の意識化のために、しっかりアドボカシー活動を行い、YWCAが向かっていく方向を示し続けることも大切だよね。
フェミニズムやジェンダーは、インクルーシブな(全ての人を公平に受け入れる)社会の創造を目指す女性団体に重要な視点。これからの会員活動や、プログラムでも大切にしていきたいね。
                                  まとめ 藤原聖帆

サラ・ロングウェの「女性のエンパワメント・フレームワーク」
①基本的ニーズの充足  収入の向上や栄養状態の改善といった、女性の基本的ニーズに応える段階
②アクセス       教育や情報、研修などのサービスや利益へのアクセスがある段階
③意識化        女性を差別・抑圧する社会構造についての気づきを得る段階
④参加          意識化された女性が差別構造に対し、行動する段階
⑤コントロール     意思決定に関わり、女性が資源へのアクセスを直接コントロールする段階





バックナンバー

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2017年10月号 知っていますか? 外国人労働者の問題.pdf (鈴木伶子)

2017年8月号 戦争・暴力の反対語は、平和ではなく対話です.pdf (暉峻淑子)

2017年7月号 天皇の「おことば」は天皇制に生かされるか.pdf (吉馴明子)

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2017年5月号 憲法記念日に思う バーニー・サンダースの選挙運動に学ぶ.pdf (宇都宮健児)

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2017年3月号 東日本大震災から6年、東京YWCAの被災者支援の取り組みについて.pdf (池上三喜子)

2017年1月号 新しいタイプの指導者を迎える世界.pdf (ランデス・ハル)

2016年12月号 クリスマス、プレゼントは希望.pdf (上田亜樹子)

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2016年10月号 遠のく平和を、あきらめずに追い求めよう.pdf (石井摩耶子)

2016年8月号 「平和」の問題以前に「民主主義」を考える.pdf (上村英明)

2016年6月号 教育現場から18歳選挙権を考える.pdf (加藤英明)

2016年5月号 憲法記念日に思う.pdf (武井由起子)

2016年4月号 イースターメッセージ 甦るという奇跡を信じること.pdf (岩村太郎)

2016年2月号 となりびと 若い米兵との出逢い.pdf (砂川真紀)

2016年1月号 年頭にあたって 平和の種をまく.pdf (藤原聖帆)

2015年12月号 クリスマスメッセージ インマヌエルー神はだれと共におられるのか?.pdf (瀬戸英治)

2015年11月号 安全保障関連法の後に.pdf (川戸れい子)

2015年8月号 善悪を見分ける力.pdf (松本敏之)

2015年6月号 選挙が終わって 何が残った?.pdf (川戸れい子)

2015年5月号 「憲法9条」という希望をつなぐ.pdf (斉藤小百合)

2015年4月号 イースターメッセージ  平和があるように.pdf (神﨑雄二)

2015年2月号 平和憲法のために.pdf(新聞委員会)

2015年1月号 年頭にあたって 「喜びをもって集う場に」.pdf (俣野尚子)

2014年12月号 クリスマスメッセージ イエスこそ私たちの希望.pdf (ランデスハル)

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