機関紙『東京YWCA』

東京YWCAでは、会員向けに、年11回機関紙を発行しています。
ここでは、内容の一部をご紹介します。

機関紙『東京YWCA』 No.749(2019年6月号)


「命(ぬち)どぅ宝」
  ―わたしは命である― 
    ヨハネによる福音書11章25節、14章6節

神谷 武宏

(沖縄バプテスト連盟普天間バプテスト教会牧師、付属緑ヶ丘保育園園長)

 今年も6月23日「沖縄慰霊の日」を迎えます。恒久平和を特別に祈願する日ですが、この日は沖縄戦が終結した日ではもちろんありません。74年前、沖縄戦末期に第32軍司令官牛島満が自決した日で(22日説あり)、組織的戦闘が終結した日になるわけです。その司令官は自決前に「各部隊は各地で最後まで敢闘し悠久の大義に生くべし」と玉砕命令を下したのでした。その命令により戦闘は8月15日を過ぎても続き、結局は9月7日の降状調印式まで長期化することになったのです。この玉砕命令がなければ死ななくてもよかった者がどれだけいたことでしょうか。沖縄戦の悔やみきれない悲劇が「6・23」には込められています。
 沖縄では「戦後ゼロ年」という言葉があります。1945年の敗戦後に日本の戦争は終結しましたが、しかしここ沖縄では未だ戦争の悲劇が続いているのです。
 2017年12月7日、その日私ども普天間バプテスト教会付属緑ヶ丘保育園では、来週末のクリスマス会のため、子どもたちは、聖誕劇、讃美歌の練習など、とても楽しみにしているクリスマスの準備をしていた最中にありました。午前10時20分ごろ、米軍CH53E大型輸送ヘリコプターの部品が屋根に落ちてきたのです。園庭には2歳、3歳児クラスの子どもたちが遊んでいて、突然ドーンという激しい音が園内に響きました。その音で振り返った保育士は、屋根の上で大きく跳ね上がる物体を見ています。その屋根の下は、1歳児クラスの部屋で今から園庭に出ようかとしている時でした。ドーンという衝撃音に1歳児クラスの幼い子どもたちは、「わーっ」と声を上げ、先生方も一緒に驚きました。その物体は軒先からわずか50センチのところで屋根の上で止まっていたのです。あと50センチずれていたらと思うと本当にぞっとします。6日後には近くの普天間第二小学校の運動場に同機ヘリの窓枠7.7キロのものが、体育の授業していた児童がいるわずか10数メートル先のところに落下しました。その後も不時着事故3件、オスプレイからの部品13キロの落下事故と相次いでいます。2年前(2016年4月28日)には、元海兵隊に20歳の女性が強姦・殺害され、今年4月、またしても一人の女性が米兵に殺されました。この現状を戦後と呼べるでしょうか。「命どぅ宝」は沖縄の金言です。その金言に逆行する状況がどれ程の悲しみを生むことでしょうか。
 今、沖縄の海が埋め立てられ軍事基地が造られようとしています。ジュゴンが泳ぐ海を、日本に生息する全種のクマノミが泳ぐ海を、毎年ウミガメが産卵する浜を埋め立て軍事基地が造られようとしています。毎日200台、300台を超える土砂、資材を積んだトラックが辺野古キャンプ・シュワブゲートを出入りします。しかし、ただでは出入りさせません。きょうも早朝から人々が集結し座り込み、非暴力をもって命を守ろうと体を張っています。"諦めない""命どぅ宝"を合言葉に、非暴力をもって排除されてもまた座り込む。1日でも、1時間でも工事を遅らせ、軍事基地を造らせないと座り込みを続けています。
 沖縄の歴史、現状に向き合うことは日本人の責務と言えるでしょう。なぜなら、日本人の大多数が支持する政府の思惑により、沖縄の「命」が奪われ続けているからです。

 「わたしは命である」(ヨハネ11:25、14:6)とは、イエスの言葉です。「命」はイエスであると聖書は記しています。すなわち全ての命は、イエス・キリストに通ずるということであり、人の命の中に、被造物の命の中にキリストが居られるということです(ローマ8:18~30)。そのように多くの人間が理解し、命の尊さを覚える時、私たちの世界から命が脅かされること、命が暴力によって奪われることは無くなるはずです。
 「命」に向き合うことはイエスに向き合う事と言えるでしょう。きょうも沖縄でイエス(命)が死に追いやられています。「命」に向き合うことは私たちキリスト者の責務です。




バックナンバー

2019年5月号 憲法記念日に思う 「憲法を議論せよ」.pdf (島昭宏)

2019年4月号 イースターメッセージ 慰めと希望のイースター.pdf (高橋貞二郎)

2019年3月号 講演会「世界の核被害」.pdf

2019年1月号 年頭にあたって 寛容でありたい.pdf (川戸れい子)

2018年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスを迎えるために.pdf (瀬口哲夫)

2018年11月号 講演会「BC級戦犯を知っていますか?」.pdf

2018年8月号 そこに「痛み/悼み」はあるか.pdf (金迅野)

2018年7月号 対決ではなくて、対話こそが平和を作る.pdf (楊志輝)

2018年6月号 沖縄と憲法.pdf (金井創)

2018年5月号 憲法記念日に思う ー改憲的護憲路運について.pdf (高木一彦)

2018年4月号 復活?.pdf (秋葉晴彦)

2018年3月号 国際女性デーを記念して.pdf (藤原聖帆、山口慧子対談)

2018年1月号 年頭にあたって この道を、ためらわず.pdf (実生律子)

2017年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスの光と闇.pdf (鈴木育三)

2017年11月号 「共に生きる」ということ.pdf (田中公明)

2017年10月号 知っていますか? 外国人労働者の問題.pdf (鈴木伶子)

2017年8月号 戦争・暴力の反対語は、平和ではなく対話です.pdf (暉峻淑子)

2017年7月号 天皇の「おことば」は天皇制に生かされるか.pdf (吉馴明子)

2017年6月号 米軍基地と沖縄.pdf (糸洲のぶ子)

2017年5月号 憲法記念日に思う バーニー・サンダースの選挙運動に学ぶ.pdf (宇都宮健児)

2017年4月号 イースターメッセージ からだのよみがえり.pdf (大久保正禎)

2017年3月号 東日本大震災から6年、東京YWCAの被災者支援の取り組みについて.pdf (池上三喜子)

2017年1月号 新しいタイプの指導者を迎える世界.pdf (ランデス・ハル)

2016年12月号 クリスマス、プレゼントは希望.pdf (上田亜樹子)

2016年11月号 障害があることと、パラスポーツの関係.pdf (橋本和秀)

2016年10月号 遠のく平和を、あきらめずに追い求めよう.pdf (石井摩耶子)

2016年8月号 「平和」の問題以前に「民主主義」を考える.pdf (上村英明)

2016年6月号 教育現場から18歳選挙権を考える.pdf (加藤英明)

2016年5月号 憲法記念日に思う.pdf (武井由起子)

2016年4月号 イースターメッセージ 甦るという奇跡を信じること.pdf (岩村太郎)

2016年2月号 となりびと 若い米兵との出逢い.pdf (砂川真紀)

2016年1月号 年頭にあたって 平和の種をまく.pdf (藤原聖帆)

2015年12月号 クリスマスメッセージ インマヌエルー神はだれと共におられるのか?.pdf (瀬戸英治)

2015年11月号 安全保障関連法の後に.pdf (川戸れい子)

2015年8月号 善悪を見分ける力.pdf (松本敏之)

2015年6月号 選挙が終わって 何が残った?.pdf (川戸れい子)

2015年5月号 「憲法9条」という希望をつなぐ.pdf (斉藤小百合)

2015年4月号 イースターメッセージ  平和があるように.pdf (神﨑雄二)

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