機関紙『東京YWCA』

東京YWCAでは、会員向けに、年11回機関紙を発行しています。
ここでは、内容の一部をご紹介します。

機関紙『東京YWCA』 No.814(2025年6月号)

基地のそばで暮らすということ                                      ~今、本土のわたしたちに問われていること~                              語り部・明有希子(あきらゆきこ)さんの話を聞いて                               3月15日(土) 東京YWCA会館

                        平和と正義委員会 チーム「月桃の会」

基地のそばで暮らす
 沖縄戦以前は、現在の宜野湾市の中心に宜野湾村役場や宜野湾国民学校があり琉球松の宜野湾並松街道が首里まで続いていた。いまは宜野湾市の真ん中を普天間飛行場が占め夜も夕方のようにオレンジ色に明るい空が日常になった。ここで生まれ育った有希子さんは幼い頃、お祖父さんに「どうして明るいの?」と尋ねたが、40年たって娘から同じ質問を受けたという。お祖父さんは沖縄戦の兵士で家族のなかでたった一人生き残り、有希子さんのお父さん兄弟が生まれた。お父さんは復帰まえに県外の大学へ行きパスポート(「日本渡航証明書」)を持っていることで「沖縄から来たんだろう」と偏見を受けたそうだ。
 宜野湾市の29.4%が米軍基地。米軍機の飛行には日米間の取り決めがあり、保育園・学校などの上空は飛行ルートでないのに守られない。2017年に娘さんが通う緑ヶ丘保育園の屋根に米軍ヘリCH-53の部品が落下した。その6日後、普天間第二小学校の校庭にCH-53E型ヘリの7.7㎏の窓が落下した。保育園上空の飛行禁止と事故原因の究明を求める「嘆願書」を父母会を中心に作成し署名を集め何度も政府交渉をした。いまも学校上空の飛行禁止を要請している。 

本土と沖縄の立ち位置を考える
 本土と沖縄の立ち位置を皆さん一人ひとりに考えてもらいたい、自分たちの足元を見直してほしいと、有希子さんは、日本の国土面積0.6%の沖縄に国内の米軍専用施設の70%を負担させていることを、47人クラスのランドセル47個に例えて図示された。沖縄さん1人に33個のランドセルを持たせている現状の図。青森さん4.5個、東京さんと神奈川さんが2.5個ずつ...。「日米安保条約による米軍基地を平等に負担すべき」という議論は進まない。安倍晋三首相(当時)20182月の衆院予算委員会で、沖縄にある米軍基地の県外移設が実現しない理由について「移設先となる本土の理解が得られない」と答弁している。
 「父母による自作自演」、「子どもを盾にして平和運動をするな」という分かりやすい攻撃・誹謗中傷だけでなく、無意識な無自覚な攻撃=マイクロアグレッションがあると有希子さんは続けた。デモなどで見かける「沖縄の闘いに連帯する」「沖縄にいらないものはどこにもいらない」というアピールや「辺野古ツアー」の呼びかけに触れるたびに、70%の基地を押し付けている本土の人たちが言うことなのか疑問になってきたと、有希子さんは言われる。 

わたしたちができること
 有希子さんは沖縄で生まれ育った。加重な基地負担があり、米軍機の騒音と危機避難で保育・授業が中断され学ぶ権利が奪われる。空から危険な物が降ってくる。街には屈強な米兵がいて毎週末に事件事故を起こし、性的暴力や殺人が続く。そんな中で有希子さんは暮らしている。
 有希子さんの話を聞いてわたしたちは、沖縄に70%の基地を負担させ全く減らせていないこと、普天間飛行場の代替として辺野古・大浦湾の工事を進めていること、今また那覇軍港の移設先として浦添西海岸を埋め立てる計画も、「沖縄が抱える基地問題」ではなく「日本が抱えて沖縄に押し付けている日本の米軍基地問題」だと改めて思う。
 本土の人たちができることと、沖縄の人ができることは違う。本土の人にしかがんばれないこと、本土でしか考えられない問題があると、有希子さんも言われた。
 「政治を変える。圧倒的に人数の多い本土から変える。自分たちの自治体を変える。半径5メートルから変える」と有希子さんに励まされた。
 今年3月もニューヨークでCSW69(The Commission on the Status of Women;第69回国連女性の地位委員会)が開催され、日本YWCAパラレルイベント「脅威のもとで暮らす 在日米軍基地問題を共に考える」を沖縄、長崎、京都、名古屋、東京の各YWCAのユースが発表した。沖縄の声として基地があるがゆえの騒音被害、事件事故、レイプ事件を伝え、植民地主義、日米地位協定を考えていく取り組みが報告された。これから各地で報告されることと思う。
 さまざまな力を合わせてヤマトでしかできないことに取り組んでいきたい。

 

バックナンバー

2025年5月号 「社会を理想に近づける努力~憲法を活かそう」.pdf(伊藤千尋)

2025年4月号 イースターメッセージ 復活の命の光.pdf(南 望)

2025年3月号 国際女性デーにあたって 現代の『隣人』ー日本に暮らす外国籍の女性支援の中から.pdf(新倉久乃)

2025年1月号 年頭にあたって 平和をつくりだす人々とともに.pdf(坂口和子)

2024年12月号 クリスマスメッセージ「飼い葉桶に生まれたイエスさま」.pdf(福永保昭)

2024年11月号 聖書に親しむ.pdf(左近豊)

2024年10月号 呉市で海上自衛隊「巨大で多機能な複合防衛拠点設置」案急浮上.pdf(永冨彌古)

2024年8月号 「平和の礎」に刻まれた名前の叫び.pdf(島しづ子)

2024年7月号 <人間としての羞恥>に向き合うことを求めてきたパレスチナと反憲法的行為.pdf(清末愛砂)

2024年6月号 戦雲に覆われる日本列島.pdf(三上智恵)

2024年5月号 憲法記念日に思う.pdf(齊藤小百合)

2024年4月号 イースターメッセージ「二人は走る」.pdf(松本敏之)

2024年3月号 パレスチナ問題から考える「人間の姿」と「日本の立ち位置」.pdf (桃井和馬)

2024年1月号 年頭にあたって 『核』否定の思想に立つ.pdf(坂口和子)

2023年12月号 クリスマスメッセージ 悲しみのさらに向こう.pdf(友野富美子)

2023年11月号 クリスマスと音楽.pdf(竹内智子)

2023年10月号 今はもう「茶色の朝」になっている.pdf(渡辺一枝)

2023年8月号 ウクライナ避難者から教えられたこと.pdf(横山由利亜)

2023年7月号 原発の本当の怖さ.pdf(小倉志郎)

2023年6月号 YWCAは魅力的なところ.pdf(遠藤久江)

2023年5月号 憲法記念日に思う 真の性売買禁止法の制定を.pdf(角田由紀子)

2023年4月号 イースターメッセージ イエスの平和(その2).pdf(廣石望)

2023年3月号 座談会 ユースに聞く、性と生殖に関する自己決定とYWCA.pdf

2023年1月号 「全力ハイブリッド」で次のステージへ「対話の灯を」点火しましょう!.pdf(山本知恵)

2022年12月号 クリスマスメッセージ 世界の隅で起こったこと.pdf(マリア・グレイス笹森田鶴)

2022年11月号 性と生殖に関する健康と権利.pdf(雀部真理)

2022年10月号 イエスの平和.pdf(廣石望)

2022年8月号 被爆77年。過去を見つめ、未来を考える―広島YWCAのいま.pdf     (中澤晶子)

2022年7月号 平和の種をまく.pdf (内山佳子)

2022年6月号 「お花畑」を笑う者は「焼け野原」をもたらす.pdf(中野晃一)

2022年5月号 第38回憲法カフェ 岸田政権と自民党憲法改正案.pdf

2022年4月号 イースターメッセージ「えっ、こわい」 .pdf(有住航)

2022年3月号 国際女性デーにあたって 国連女性の地位委員会(CSW)とYWCAのかかわり.pdf (根本博子)

2022年1月号 年頭にあたって 平和の器とならせてください.pdf(栗林(坂口)和子)

2021年12月号 クリスマスメッセージ 夜明けは近い.pdf (井口 真)

2021年11月号 キリスト教教育が大切にしているもの.pdf (西原廉太)

2021年10月号 聖書が語る希望.pdf

2021年8月号  足元から平和をつくる.pdf (樋口さやか)

2021年7月号 コロナ禍に生きる女性と子ども.pdf (大日向雅美)

2021年6月号 平和創造~野尻湖から辺野古へ~.pdf (金井創)

2021年5月号 憲法記念日に思う 私にとってのキリスト教基盤.pdf (幕谷安紀子)

2021年4月号 イースターメッセージ 敗者の復活.pdf (堤 隆)

2021年3月号 「留学生の母親」運動 現在・過去・未来.pdf(八星恵子)

2021年1月号 年頭にあたって それでも心を高く.pdf (川戸れい子)

2020年12月号 クリスマスメッセージ マリアの歌.pdf(柳下明子)

2020年11月号 コロナ禍でDVを引き起こしているものとは.pdf(丹羽麻子)

2020年10月号 拡大ひととき礼拝 平和を実現する人々は、幸いである.pdf(ランデスハル)

2020年8月号 原爆投下75周年の広島に身を置いて.pdf(湊晶子)

2020年7月号 地球温暖化と私たち.pdf (山内恭)

2020年6月号 憲法記念日に思う 個の尊厳を奪われた存在が象徴であるということ.pdf (齊藤小百合)

2020年4月号 イースターメッセージ 倒れても大丈夫.pdf (吉岡康子)

2020年3月号 生かされている喜び―問題だらけの社会で―.pdf(太田尚子)

2020年1月号  世界に仲間たちと共に目指す、2035ビジョン.pdf(藤谷佐斗子)

2019年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスの光.pdf(東彩子)

2019年11月号 韓国で「わたし」と向き合いながら.pdf(長尾有起)

2019年10月号 「日米同盟」とは何か.pdf (川戸れい子)

2019年8月号 昨日に変わらぬ今日、今日に変わらぬ明日.pdf (鈴木伶子)

2019年7月号 権力者から私たちの時間を取り戻そう.pdf (石井摩耶子)

2019年6月号 「命(ぬち)どぅ宝」―わたしは命である―.pdf (神谷武宏)

2019年5月号 憲法記念日に思う 「憲法を議論せよ」.pdf (島昭宏)

2019年4月号 イースターメッセージ 慰めと希望のイースター.pdf (高橋貞二郎)

2019年3月号 講演会「世界の核被害」.pdf

2019年1月号 年頭にあたって 寛容でありたい.pdf (川戸れい子)

2018年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスを迎えるために.pdf (瀬口哲夫)

2018年11月号 講演会「BC級戦犯を知っていますか?」.pdf

2018年8月号 そこに「痛み/悼み」はあるか.pdf (金迅野)

2018年7月号 対決ではなくて、対話こそが平和を作る.pdf (楊志輝)

2018年6月号 沖縄と憲法.pdf (金井創)

2018年5月号 憲法記念日に思う ー改憲的護憲路運について.pdf (高木一彦)

2018年4月号 復活?.pdf (秋葉晴彦)

2018年3月号 国際女性デーを記念して.pdf (藤原聖帆、山口慧子対談)

2018年1月号 年頭にあたって この道を、ためらわず.pdf (実生律子)

2017年12月号 クリスマスメッセージ クリスマスの光と闇.pdf (鈴木育三)

2017年11月号 「共に生きる」ということ.pdf (田中公明)

2017年10月号 知っていますか? 外国人労働者の問題.pdf (鈴木伶子)

2017年8月号 戦争・暴力の反対語は、平和ではなく対話です.pdf (暉峻淑子)

2017年7月号 天皇の「おことば」は天皇制に生かされるか.pdf (吉馴明子)

2017年6月号 米軍基地と沖縄.pdf (糸洲のぶ子)

2017年5月号 憲法記念日に思う バーニー・サンダースの選挙運動に学ぶ.pdf (宇都宮健児)

2017年4月号 イースターメッセージ からだのよみがえり.pdf (大久保正禎)

 

 

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