機関紙『東京YWCA』

東京YWCAでは、会員向けに、年11回機関紙を発行しています。
ここでは、内容の一部をご紹介します。

機関紙『東京YWCA』 No.730(2017年10月号)

知っていますか? 外国人労働者の問題

鈴木伶子(会員、日本YWCA元総幹事)

 外国人が日本に住むことは容易ではありません。文化の違いだけではなく、法的に在留許可を得るのが困難だからです。在留ビザは特定の職種に限られ、単純労働にはビザがでません。観光ビザで来日し、ビザの期限が切れても働き続けている「不法」滞在者もいます。しかし、単純労働に従事する外国人がいなければ、日本の社会は回らないのが現実です。ある港町では、インドネシアの人が獲れた魚の加工をしていましたが、入国管理事務所の捜査が入るという情報で、一夜のうちに働き手が逃げ出し、魚の加工はお手上げになりました。故国に比べると高額な日本の給与に引き寄せられてくる経済難民といわれる人がいる一方、日本では、深刻な人手不足、特に俗に3K(きつい、汚い、危険)と呼ばれる職種での人手不足が顕著です。この両方が相まって、このような労働者の増加を生み出しているのです。
 2014年、安倍政権は、人手不足解消のために、外国人労働者の活用拡大をめざし、具体策として技能実習制度の活用を打ち出しました。外国人技能実習制度は1993年に法務省と厚労省が創設したもので、当初の事務所は駿河台のYWCAの近くにありましたので、労働条件改善を求める外国人が群れていたのを見た人もいるでしょう。制度の本来の目的は、日本の技術を相手国に移転するという国際貢献を謳ったものです。しかし、実際には、中小企業での単純労働に雇われることも多く、時給310円、月120時間の残業という非人間的な働かせ方をするものがあり、我慢できずに失踪した技能実習生が年間2,000人前後に上っています。米国務省の人身売買報告書は、日本の技能実習制度を「現代の奴隷制」と非難しています。
 建設分野では、東京オリンピックの需要が大きいため、政府は建設部門で技能労働者の受け入れ期間を2年延長して5年とする時限措置を発表しました。オリンピックが終わり、建設ブームが去る時には、実習生も帰国するように時期を合わせています。また、新たに技能実習生に介護の分野を加えることも決めました。すでに、介護分野では、日本はインドネシアなどと経済連携協定を結び、看護師や介護福祉士など、日本で働く資格が取れるようにしていますが、資格を得ても、かなりの数の人が自国に帰り、日本での仕事に就きません。日本語習得の困難さに加え、家族を呼び寄せられないなど、その人たちの生き方に合う環境が与えられていないからです。
 さらに、今回新たに外国人労働者の受け入れに追加されたのが、家事労働です。「育児・介護中で就業希望しているが就業できない女性等のため、家事の補助・介護分野での外国人のサポート」というものです。日本の「女性が輝く」ためでしょう。この先駆けとなる特区に真っ先に手をあげたのが小池都知事です。しかし、家庭内という外部から見えない場所で働くことには、さまざまな人権侵害の懸念がありますし、現在、女性の就労を妨げている保育や労働時間などの根本的な問題を解決することにはなりません。建設や介護分野でも、給与・休暇など厳しい労働環境自体の改善にはつながりません。
 政府や企業の「解決策」から見えてくるものは、外国人を人間として尊重することではなく、単なる労働力として利用し、それによって日本の苦境を乗り切ろうとしていることです。他方、キリスト教界には、「外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会」(外キ協)のように、日本に住む外国人が住民として人権を保障されるように働く運動もあります。「あらゆる違いを超えて、すべての人が神の前に等しい」をモットーに、他国の人々と顔を合わせる機会も多いYWCAとしても、真剣に考えるべき問題です。





バックナンバー

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