泳ぐ喜びと出会いの楽しさ―「あひるの会」に参加して

東京YWCA会館にある女性専用プールで行われている、肢体不自由者水泳「あひるの会」。
スポーツをする喜びはすべての人に与えられるべきとの考えから、競技ではなくレクリエーションとしての水泳を、ボランティアがマンツーマンで指導します。
肢体不自由者水泳「あひるの会」についてはこちらをご覧ください。

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今回は、「あひるの会」に小学生の頃から参加している20代の女性に話を聞きました。

石川美沙さん
脳性まひのため、手足に障がいがあり、移動には電動車イスを使っている。自宅から東京YWCA会館までは、ヘルパーに付き添ってもらっている。(右写真は、YWCAフィットネスワオのロビーにて。)


きっかけは友だちに誘われて

―「あひるの会」に参加したきっかけを教えてください。

石川さん:
 小5の秋に学校の友だちから「スイミングをやってるところがあって、空きがあるから一緒に行かない?」と誘われて始めました。

―水泳は得意だったんですか?

石川さん:
 いいえ、学校の授業しかプールに入る機会がなかったので、最初は浮くこともできなかったんです。

―はじめから泳ぐことが好きだったわけではないんですね。

石川さん:
 ここに通うようになって、好きになりました。体を動かすのが好きになって、今では水泳以外のスポーツもやっていますが、水泳が一番長いですね。泳ぎも最初に比べればかなり上達したかな。


全身運動の水泳がもたらす心と体の気持ちよさ

―小5のときからずっと続けているんですか?

石川さん:
 高校に入ったとき、授業と重なって一度やめたんです。続けたいけど授業が大事と思って。その後、高3のときに学校の先生がすすめてくれて再開し、卒業後もずっと続けています。

―先生のすすめというのは?

石川さん:
 学校で行う訓練は、手足の訓練や―私は歩けないんですが―それでも歩行訓練とかします。そうした訓練は全身を動かせるわけではないけれど、その点、水泳は全身運動なので体も動くことから、先生が「訓練より良いのでは?また行ってみたら?」と言ってくれたのだと思います。

―再開してどうでしたか?

石川さん:
 やってよかった!と思いました。

―その「よかった!」は、今も続いていますか?

石川さん:
 はい。水泳は、終わった後が本当に気持ちがいいんですよ。体も楽になりますし。私にとって全身運動は水泳だけなので、プールに入ることで、体がかたくなるのを防いでいる気がします。今でも少しずつ体はかたくなっているとは思うんですけど、もし水泳を続けていなかったら、こうして車椅子に座っている状態を保つことも難しかったと思います。


人との交流や、友人との出会いも楽しい

―水中運動の良さや解放感に加えて、「あひるの会」の魅力はありますか?

石川さん:
 おしゃべりも楽しいですよ(笑)。ここに来ると会える人がいます。同級生や、歳の違う人たちとも話せます。ボランティアの人も色んな方がいるので、話題は尽きないですね。プールに来て泳ぐことももちろん大切だけど、私にとっては、みんなと話せるというのが一番楽しいです。

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プールでの一コマ。ピンクのキャップが石川さん。「あひるの会」で十年来の仲の良い友人と。







―長く続けていると、知っている人も多くなりますよね。

石川さん:
 ボランティアの人も長く関わっている人がいるので、「こんなちっちゃかったのに大きくなったね」とか言われると、ちょっと照れますね。


「あひるの会」は貴重な場、ずっと続いてほしい

―生活の中で「あひるの会」に来ることは、どんなことですか

石川さん:
 もう日常の一部ですね。体調を崩さない限り必ず来るところになっています。ヘルパーさんも東京YWCAに来る曜日に合わせて頼んでいるんですよ。

―「あひるの会」に向けて、メッセージをお願いします。

石川さん:
 ずっと「あひるの会」を続けてほしいです。「あひるの会」は、ボランティアの人が水泳指導だけでなく水中介助もしてくれます。だから私はこうして泳ぐ機会を得ているけれど、こうした場所は、なかなか他にありません。ヘルパーさんにプールで水中介助をしてもらうのは色々難しいと思うし、そうした話は聞いたことがないですね。もしボランティアでなく親がプールで介助するとしたら、私の場合、あれこれ言い合いになってケンカになってしまう気がします(笑)。

―最後に、ご自身の今後の目標などを聞かせてください。

石川さん:
 自分なりに、―人の手助けは必要なんですけど―、手助けを受けながら、水泳や他のスポーツをしたり、外に出かけていったり、がんばりたいなと思います。


学生時代は陸上やハンドサッカーもしていたそうです。今は水泳の大会以外にボッチャ※のチームで地方の大会に出場することもあるという、アクティブな石川さん。「毎日が忙しい」と充実している様子で、これからも色々なところに出かけていきたい、と話されていました。
(※障がい者のためにヨーロッパで考案されたスポーツ。パラリンピックの正式種目にもなっている。)


(2022年追記:インタビューと写真は、2014年当時のもの。2022年6月現在も、石川さんは「あひるの会」に参加されています。)

肢体不自由者水泳「あひるの会」について

「あひるの会」の名前の由来は、「陸ではうまく動けなくても水中ではスイスイ動けるように」という願いから、参加者によって命名されました。始まりは1957年。もう半世紀以上、続いています。

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「あひるの会」について詳しくはこちらをご覧ください。