平和につながる絆を築く―「留学生の母親」運動ボランティア

日本で学ぶ外国人留学生のために、1961年から活動する東京YWCA「留学生の母親」運動。
ボランティア会員が担うその活動は、一人の留学生と「組み合わせ」になって、日本の「お母さん」として交流したり、奨学金を支給する留学生を選考したり、留学生相談室を運営したりと、多岐にわたります。

「留学生の母親」運動の活動についてはこちらをご覧ください。

河野さん.JPG「留学生の母親」運動に参加している、会員の河野和子さんにお話を聞きました。

YWCAとの出会いは?

かれこれ50年前、高校生だった私は、夏休みを利用し仙台から東京YWCAの野尻キャンプに参加しました。仙台から列車を乗り継ぎ、とても長い道のりをいろいろ想像しながら、少し不安に思いながらの一人旅でした。野尻キャンプでの約一週間は、初めての体験ばかりの楽しくてワクワクの毎日でした。今でも思い出します。

その頃にはもう「留学生の母親」運動が始まっていたのだと後になって知り、現在会員となり母親運動に参加していることに、不思議な縁を感じています。

東京YWCAに宿泊施設があった時代に、ここなら女性でも安心だから、と利用したこともありました。

「留学生の母親」運動に参加したきっかけは?

40年来の友人が母親運動に参加していて、紹介されたのがきっかけです。1996年以来10人の留学生の「お母さん」になりました。最初の組み合わせの留学生は、タイからの留学生でした。当時まだ携帯電話など使っていませんでしたので、連絡などものんびりとしていました。時間を見計らって電話をかけて話をしたり、葉書を書いたりしていました。

活動の様子を聞かせてください

タイ、香港、マレーシア、バングラデシュ等からの留学生たちと交流しました。食べ物のこと、宗教のこと、国のことなど留学生たちから学ぶことも多くなりました。留学生たちの日本語の上達ぶりは素晴らしく、会うたびに驚き、時に漢字を忘れた私は教えてもらったりすることもあります。

年々留学生たちとの交流は、変化してきていると思われます。「お母さん」としての気持ちは変わっていませんが、留学生たちにどうしているのと尋ねることなく、SNSを利用することによりいつ何をしているのかどこに行っているのか知ることもできるのです。また留学生たちは、様々な電子機器を使うことにより瞬時に情報を得て疑問を解決し、母国の家族との連絡も簡単にできるので、遠く離れたという感覚は薄れてきているようにも感じます。これからもしばらくは「お母さん」ですが、何があってもここに日本の「お母さん」がいるから安心と思ってもらえる存在でいたいです。

留学生との交流と同時に、母親運動の弁論大会やバザーなどの行事に参加するようにしました。参加したことによりいろいろな会員たちとの交流が広がり、体験談や意見を聞くことができ反省したり納得したりでした。日々の生活に様々な刺激と変化を与えてくれる母親運動に感謝の気持ちを持ちながら、これからも留学生たちを見守っていきたいと思っています。

組み合わせの留学生からのコメント1
ソングロッド シンペンさん(タイ)

河野さん留学生1.JPG最初のほうは日本語が話せなくて、どんなことを活動しているのかちゃんと理解できなかったです。しかし、様々なイベントに参加して、より多くの人と日本語で話せて、日本での生活がより楽しく感じました。自分のお母さんだけではなく、この「留学生の母親 」運動の皆さんはとても優しくて、この運動に参加して本当によかったです。

私のお母さん(河野さん)はとても優しいです。日本に来たばっかりのころは、日本語はまだあまり話せなくて、わからないことばっかりでしたが、お母さんが色々優しく教えてくれました。そのため、不安なことがあるときに、いつでも気軽にお母さんに相談できて、本当に良かったです。日本に来て、お母さんがいるからこそ、自分は一人ではないと感じました。そして、お母さんはとても元気な人で、一緒にいると元気がもらえて、今までとても楽しかったです。

組み合わせの留学生からのコメント2
朱 建山さん(マレーシア)

朱建山.JPG私は母さん(河野さん)と組み合わせできたのは大学2年生の春でした。実は来日の1年目で日本語学校時に母親運動に応募しましたが抽選で当たらなかったので2年生の時にまた応募しました。面接の日に予定時間より1時間早く会場へ行って、1番の面接チャンスを頂きました。組み合わせ結果が届いた日に母さんから家族写真と手紙をもらいました。その日から私と日本の母さんと絆を結びました。

私は和食が大好きで、普段は同期生や留学生の友達とあまり食べに行かないので、母さんとの食事は和食を中心に楽しい食事会をしました。母さんとよく話す内容としては、自分のバイトでの職場話や経験した話を語りました。私は留学生として日本人が中心の職場で習ったことや反省すべきことを母さんに毎回報告しました。母さんに自分の成長を感じてもらいたいです。私は母さんの"11番目の息子"であり、日本にいるお兄さんにもたくさんお世話になりました。私は母さんの大家族の一員になれるのは幸せと感じました。

母さんと組み合わせ出来て4年目に入りました。一番印象を残っているのは東京YWCAの卒業お祝い会と大学の卒業式でした。卒業お祝い会で自分の留学生活を振り返って、母さんからアドバイスをもらって、自分の成長に繋ぐエピソードがたくさんあり話しました。母さんの支えがあるからこそ、自分の留学生活を無事に歩んできました。また、大学の卒業式でマレーシアの両親(写真左の二人)と日本の母さん(写真右)と話している姿を遠いところから見て、YWCAの母親運動は国際交流の目標を達成したと感じました。

最後、母さんとの絆の語りをもっと増やして、この縁を大事にしたいと思います。母さん、日本で色々世話になりました。ありがとうございました。