東京YWCA広報紙『Newsletter』vol.29
発行日:2025年7月15日
目次
【特集】2024年度を振り返って
東京YWCAはキリスト教の基盤に立ち、人権・健康・環境が守られる平和な世界の実現をめざして、事業を行っています。今号は、2024年度の事業の報告号です。ぜひご覧ください。多くの皆様のお支えにより事業が実施できたことに、心より感謝申し上げます。
青少年育成
外国ルーツの子どもへの支援
一人ひとりに合った学びを大切に
小さな疑問も一つひとつ一緒に考える学習支援。それぞれのペースで勉強します。手作りのすごろくやベーゴマで遊ぶ時間も
日本語を母語としない親を持つ子どもたちへの日本語・学習支援「いちごの部屋」は、幼児から高校生まで幅広い年齢層の子ども31人を、ボランティア35人が支援しました。一人ひとりの個別のニーズに応えるため、学習支援はボランティアが一対一で行います。対面支援が基本です。部活などの都合でオンラインで支援した子どももいましたが、受験が近づくと「対面のほうがわかりやすい」と武蔵野センターに通ってきました。
同じ時間に来ている子ども同士で、学習の合間に遊ぶことも日本語を身近に感じながら楽しく学ぶ機会です。支援ボランティアのユース(学生や20代の社会人)たちが企画した特別プログラムでは、皆で近所のお店に行き、買い物体験をして、買った材料でサンドイッチやおにぎりを作ってランチをしました。その後、近くの公園で遊び、ユースたちと思いっきり走り回る時間を過ごしました。また、「外国にルーツのある子どものためのサマーキャンプ」を、昨年に続き東京YMCAとの共同開催で行いました。
保護者を支援することは子どもへの支援につながります。2年目を迎えたペアレンツ・カフェでは、保護者どうしで日本での生活についてなど自由に話をしたり、ボランティアと日本文化の体験をしたりしました。また、子育て中で外出しにくい保護者に、オンラインでの日本語支援も行いました。
大学の授業へのゲスト講師としての参加や、サービス・ラーニング実習の受け入れは、学生ボランティアの参加に繋がりました。また、一人の子どもを複数の団体が連携して支援することもあり、地域でのつながりや協働が深まっています。
体験プログラムやボランティア養成の充実のため、引き続きご支援ください。
*この事業は運営費の一部を「三菱財団×中央共同募金会~新型コロナウイルス感染下において困窮する人々を支援する~外国にルーツがある人々への支援活動応援助成事業」からの助成を、また、サマーキャンプは「俱進会」の助成を受け実施しました。
社会福祉
きょうだい児と家族を支援
障がい児「きょうだいの会」
きょうだい児(障がい児の兄弟姉妹)が主役のプログラム「きらりんこ」にはきょうだい児支援に関心が高いボランティアリーダーが多く参加し、おやつ作り、水遊び、コント、クリスマス会、科学技術館へお出かけと、子どもたちのリクエストとリーダーのアイディアが集結した多彩な活動が展開されました。子どもたちの間で遊びが自然と始まっていたり、お喋りしていたりと緊張せず気楽に過ごせる場となりました。「きらりんこ」のお迎えに合わせて開いた親同士の「いどばた」は参加回数を重ねる度にお互いの状況が分かり、吐露した思いを共有したり共に喜びあったり緩やかで温かな繋がりが生まれています。
支援体制構築に協力する協定を板橋区と締結
福祉計画にきょうだい児支援を盛り込んだ板橋区と2025年3月に協定を締結しました。これまで積み重ねてきた経験を活かし、ご家族の声を繋げて区の事業に協力していきます。
(上・左下)2024年度もたくさん遊びました! (右下)協定締結式
平和と人権
東日本大震災の風化を防ぐ
紛争地を、被災者を、私たちは忘れていません
紛争・災害時緊急支援事業は、2022年2月24日のロシアによる軍事侵攻で平和を脅かされるウクライナの子どもたちと女性たちを支援するため、ポーランドの日本語学校の協力で、ウクライナの学生と日本の学生のオンライン交流会やポーランドに避難したウクライナの子どもたちの絵画展を開催しました。この事業は全国のYWCAによびかけて2025年度も継続します。東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故で避難した人びとの日常は戻っていません。責任があいまいにされ、避難者が復興の妨げになるとでもいうような社会の同調圧力の中で、避難者の人権は本来だれが守らなければならないのか、風化を防ぐプログラムを6月と3月に行って、当事者や専門家から聞きフロアとともに考えました。
青少年育成
リーダーストレーニング
安全で楽しい教育キャンプのために
キャンプが好き、子どもたちと遊びたいなど、さまざまな動機で集まった大学生たちをキャンプのリーダーとして育てていくのがリーダーストレーニングです。2024年度は、7月に野尻キャンプ場で実際にキャンプを体験しながら、プログラムの安全面やサポート方法を講義と実技で学びました。2月にはGALA湯沢スキー場で、日帰りのスキーリーダーストレーニングを実施しました。どちらもベテランリーダーと新人リーダーの交流、また、リーダー同士の連帯感が生まれる機会にもなりました。東京都内でアーチェリー練習やボート練習などもトライアルで実施し、自身のスキル向上と指導技術の継承を進めています。
キャンプで使える実践的なスキルを皆で楽しく習得していきます
平和と人権
「基地のそばで暮らすということ」
今、本土のわたしたちに問われていること
宜野湾市出身で、3年前から夫の転勤で東京に暮らす明(あきら)有希子さんにお話を伺いました。2017年12月7日、宜野湾市にある普天間基地に近い緑ヶ丘保育園に米軍ヘリコプターの部品が落下しました。「危険なものが空から降ってくる」。この保育園に子どもを通わせていた明さんは当事者になって初めて、子どもの命がおびやかされていることに気づき、事件後から署名活動、行政への陳情書、請願書を提出、政府への要請行動を続けてこられました。集会で明さんは、本土と沖縄の立ち位置を考えてほしい、平和を享受する本土と日常生活に米軍兵士が身近に存在する沖縄の現状の違いを知ってほしい、沖縄の問題ではなく、日本の問題として、本土の人が本土の人に伝えてほしい、と強調されました。講演の後のグループディスカッションでは、日米地位協定を変える、基地問題に真剣にとりくむ政治家を主権者として選ぶことが必要という意見がありました。集会に合わせて、東京YWCA会館ロビーで、「うらそえ西海岸パネル展」を開催しました。
(左)語り部の明有希子さん (下)参加者(42名)のみなさん
緑ヶ丘保育園米軍ヘリ落下物事故とは
緑ヶ丘保育園に米軍ヘリコプターの部品が落下し、あわや大惨事となる事故がおこりました。そもそも保育園の上空は軍用機の飛行ルートとして認められていません。事故の原因究明も不十分なまま、現在も日常的にヘリや飛行機が爆音とともに園児たちの上を飛行しています。
平和と人権
DV被害者支援の質向上のため
支援者向けの研修ができるトレーナーを養成
暴力の被害を受けた女性や子どもへの支援の質向上を目指して、支援者対象研修「DVサバイバーと協働するための支援者トレーニング」を提供し始めて10年余りになります。この間、全国の自治体の女性相談支援員や民間の支援員など300人以上が受講しましたが、トレーニングを継続するためには、講師となるトレーナーの養成も同時に必要となっています。2024年度は、支援者トレーニングの開発に関わり、アメリカで長くDV被害者支援に携わってきた尾崎礼子さんを講師に迎え、「トレーナー養成講座」を7年ぶりに実施しました。全国から11人が講座に参加し、基礎的知識の講義から実践まで包括的に3日間(20時間)で学びました。参加者の中から、3人が2025年度から東京YWCAで実施する支援者トレーニングのトレーナーとして活動することが決まりました。
女性の健康
中高年女性の悩みに応える
腰・膝の関節痛の予防・改善のための水中運動
東京YWCA会館地下1階の女性専用プールで行っている「ディープウォーターウォーキング」は、体幹部や足腰の筋力低下によって引き起こされる腰痛、膝痛などの予防や改善に効果のある水中プログラムです。定員16人で週に4クラスが年間を通して満員でした。浅い所でウォーキングを行った後、腕に浮具をつけ3.5mの深さで運動します。慣れるまではバランスを取るのが難しいですが、継続することで衰えた筋肉が少しずつ鍛えられ、関節の可動域が大きくなり、筋肉や関節が本来持っている機能を回復させます。参加者から運動後は、足や身体が軽くなる、むくみが取れる等、心身ともに良い状態を保てているという声があります。
運動のあとは気分もリフレッシュします
Topics
東京YWCAの最新の活動の中から、注目の話題をお伝えします。
史料保存のためのご寄付に感謝
アーカイブプロジェクトを引き続きご支援ください
目標金額400万円を掲げ、2018年に寄付募集を開始して以来、約220万円のご寄付を頂戴しました。このうち152万円を活用しました(右図)。約70万円は準備中です。写真アルバムや機関紙のデジタル化などプロジェクトの達成には、あと180万円が必要です。ご協力をよろしくお願いいたします。
1933年、当時の駿河台会館の前で
Report 2024年度 ご寄付・ボランティア報告
東京YWCAをご支援くださる皆様に心より感謝申し上げます。2024年度は寄付目標額615万円のところ、1064万6460円のご寄付をいただきました。ご支援くださいました多くの皆様に深く感謝申し上げますとともに、今後とも東京YWCAへのお支えを心よりお願い申し上げます。
「2024年度 事業報告」のご案内
東京YWCAの事業報告および財務諸表は、ホームページで公開しています。今号でご紹介した活動以外の取り組みについても詳しく掲載していますので、ぜひご覧ください。
ご寄付のお礼とお願い
いつもご支援くださる多くの皆様に心より感謝申し上げます。いただいたご寄付は、それぞれの事業のために大切に用いさせていただきます。引き続き東京YWCAへの温かいご支援を心よりお願い申し上げます。