東京YWCAからのお知らせ
東京YWCA広報紙『Newsletter』vol.28

発行日:2025年1月15日 (年2回発行)

【特集】紛争・災害

東日本大震災被災者支援事業の10年余りの経験と出会った人々とのネットワークを生かして、2023年11月に紛争・災害時緊急支援事業がスタートしました。この事業は紛争や災害によって脅かされる女性と子どもの人権を守ることを目的としています。

NL28pht1.jpgウクライナ難民の子どもたちinポーランド「小さき画家たちの展覧会」より(詳しくはこちら

紛争・災害で私たちができること

東京YWCAは、女性と子どもにフォーカスして事業を実施するボランティア団体です。紛争・災害のエキスパートでも専門家集団でもない私たちができることは何か。東日本大震災支援事業を通して、それがわかってきたように思います。

福島の女性たちとの出会い

東日本大震災では、主に福島でお茶会や子育て支援、転地保養プログラムを通して女性たちと出会い、その時々の思いや生活の状況を伺ってきました。津波被害で生活が一変したこと、放射能に対する感じ方で家でも地域でも孤立感を抱いていること、子どもの健康への影響に対する不安など、地域や近しい人にも話せないでいることを感じてきました。 専門家ではない私たちができることは、時々に伺ったことを心に留め、一人ひとりを思いながら被災地の状況を東京に伝えること、3年目、5年目、10年目と支援団体が次々撤退しても、「もうだいじょうぶ」と言われるまで終わりにしないこと、終わりを決めるのは私たちではないということが、東日本大震災での支援事業を通して分かったように思います。

ウクライナを支援する隣国ポーランド

2022年2月24日のロシアによるウクライナへの軍事侵攻から3年が経とうとしています。昨年7月、ポーランドにウクライナから避難した子どもや女性を受け止め支援しているサンスター日本語学校からの、ウクライナの学生と日本の学生のオンライン交流会のリクエストがありました。大規模爆撃で計画停電となり、いつ電気が切れるか、警報でシェルターに入らなければならないかわからないような状況で、ウクライナ学生12人、日本の学生7人が1時間半あまり交流しました。そこで言われたことは、「ウクライナを忘れないでほしい」ということでした。日本では、日々ウクライナの戦況が報道されています。しかし、忘れられてしまうのではないか、と現地では切実に感じていることが伝わってきました。私たちがしなければいけないのは、「忘れていません」ということを、ウクライナの人々と現地で支援する人々に伝えることだと思っています。

顔の見える関係づくり

被災地支援は被災地の団体との連携が重要

東京YWCAは、キリスト教団体とはネットワークがありましたが、東日本大震災まで、災害関係のネットワークはもっていませんでした。2011年5月から福島県新地町災害ボランティアセンターのスタッフ派遣を通して震災支援団体や社会福祉協議会とのつながりができました。都内避難者への支援を模索していたとき、避難している人と都内支援者団体でつくる会議体から声をかけられました。この会議に入り、継続的にプログラムを協働することで、他団体がもつ強みと東京YWCAがとる役割、また、団体同士の互いのリーダーシップがわかってきました。

東京に大規模災害が起きたとき、どういう支援ができるか。災害支援は単体ではできません。仲間が必要です。つながる人が具体的に思い浮かぶ、顔の見える関係が重要で、東京YWCAも声をかけられる、期待にこたえられる存在でありたいです。

2024年1月の能登半島地震では、急きょ企業から物品寄付の申し出がありました。関係先にあたり珠洲市に送りました。

NL28pht2.jpgボランティアが物品寄付を発送しました

国際的なネットワークを生かして

何かしたいという個人の気持ちを集め力に代えて支援につなぎたい

ウクライナへの軍事侵攻直後、募金活動はしないの? という問い合わせがありました。そのときウクライナが必要としていたのは武器でした。募金は、何に使われるかが重要で、まず現地を支援する信頼できる団体を見つけなければなりません。それは日本YWCA、世界YWCAの得意分野です。現地からの継続的な報告は、第2次、3次の募金活動にもつながっています。

ウクライナの子どもたちを忘れないために

ポーランドに避難したウクライナの子どもたちがアートセラピーで描いた絵の展覧会を昨年10月から11月に実施しました。絵を所有するサンスター日本語学校と東京YWCAは、戦争終結まで展覧会を続けたいと考えています。今年は全国のYWCAが展示を検討しています。

NL28pht3.jpg絵画40点。子どもたちの行方は不明です

ウクライナ難民の子どもたちinポーランド「小さき画家たちの展覧会」より

戦争

「私はとても夢見がちだけど、世界について考え込んだりしているの。だから本ばかり読んでいるのよ。私は自分自身を大人だって思う時もあるのよ...」

ヴァルヴァラ・ヴィシニェフスカさん(9歳、キーウ出身)

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ふるさとでの一番の思い出

「私は友だちとこんな絵を描いては街角で行き交う人々に手渡したことがあります。もらった人々は笑顔でお礼を言ってくれました。私のふるさとはとても楽しい街でした。」

ロクソラニャ・フィグラクさん(10歳、ハルキウ出身)

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はてしないひまわり畑

「戦争が始まって、世界の色は一気に灰色っぽく変わった。それでも世界はまだカラフルだと信じたいからこの絵を描いた。僕の国で戦争が起こっていることは悲しいけれど、ママとパパは、すぐに終わるさ、大丈夫だよ、って言い続けているんだ。僕はそれを信じてる。だって......大人って噓をつかないんでしょう?」

アルテン・オニシチェンコさん(13歳、ポルタヴァ出身)

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展覧会公式サイト

巡回予定

ウクライナ/パレスチナ支援チャリティーコンサート

ウクライナYWCAはロシアの軍事侵攻直後から、またパレスチナYWCAは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)設立以前から女性と子どもの支援をしています。この2つのYWCAを資金面で支援するために、チャリティーピアノリサイタルを10月12日に行いました。最後の「キーウの大門」では、立ち上がって拍手する人もいました。一刻も早い戦争の終結を願い85人が集いました。

NL28pht7.jpg全盲のピアニスト大月裕夫さんが演奏

ウクライナと日本の学生がオンラインで

8月31日と9月7日に実施しました。交流会は意図して普通の話題を取り上げました。戦争前夜のウクライナは空前の日本ブームで、日本のアニメや食文化などで話はすぐに盛り上がりました。キーウのほかドニプロやハルキウ、避難先からの参加もありました。最後に「あなたの夢は何ですか」という問いをウクライナの学生に答えてもらいました。

オンライン交流会の発言より

私の夢は、漫画家になること。漫画家になって一人でも多くの心を癒したい。

キーウ在住、17歳女性

どう言葉で表したらいいかわからないけれど、ぼくらの日常がウクライナの人の日常になってほしいと思った。

東京在住、大学生男性

この取り組みに関するお問い合わせ先

紛争・災害時緊急支援事業

電話/03-3293-5436
メール/kaiin@tokyo.ywca.or.jp

紛争・災害対応

Topics

東京YWCAの最新の活動の中から、注目の話題をお伝えします。

外国にルーツのある子どものサマーキャンプ

新しい体験を届けたい。言葉や文化の交わりの中で

2024年8月23日から25日、東京YMCA山中湖センターで、日本語を母語としない親を持つ小中学生を対象に東京YMCAと東京YWCAが合同で行いました。東京YWCAの日本語・学習支援「いちごの部屋」で学ぶ子どもたちも参加しました。普段は日本社会の中でマイノリティであると感じることが多い子どもたちが集まって、安心して新しい体験を重ねられるようにと企画しました。1つの体験を共有することで、言葉を越えて楽しさや感動の共有があり、子どもたちの伝えたい、挑戦したいという気持ちが様々な場面で見られました。夏休み後の「いちごの部屋」で、楽しかった様子を何度もボランティアに話す子どもの姿に、こうした体験の積み重ねが日常生活へのエネルギーや励みになっていくと実感しています。

NL28pht8.jpg山中湖をビックカヌーで遊覧。みんなで一緒に声を掛け合って

いちごの部屋

DV被害者の支援者をトレーニングする人の講座

トレーナー養成講座を開催。全国から11人が集まる

東京YWCAが行っているDV被害者を支援する支援者対象の「支援者トレーニング」は、アメリカのオハイオ州で開発された研修がベースとなっています。その開発に携わった尾崎礼子さんを7年ぶりに招いて、「支援者トレーニング」の講師を務めるトレーナーを養成するために、10月25日から27日に計17時間の「トレーナー養成講座」を実施しました。講座ではDVの基礎から模擬トレーニング実施までトレーナーとして必要な知識と技能を体系的に学ぶことが出来ました。受講者のアンケートからは「講座を受け元気をもらいトレーナーとして活躍してみたい気持ちになった」「講座をきっちりプログラムすることが大切であると同時に、臨機応変に対応できることや参加者とコミュニケーションをとることも、重要であることを学んだ」という感想がありました。

NL28pht9.jpg講師は尾崎礼子さん(北ケンタッキー大学准教授)が務めました

DV被害者支援「支援者エンパワメントプログラム」

第41回憲法カフェ 映画「ベアテの贈りもの」

参加者と共に男女平等参画について考える機会となりました

「ベアテの贈り物」の上映会を9月14日カフマンホールで行いました。映画は2004年に公開され、日本国憲法 第14条「法の下の平等」と第24条「家庭生活における両性の平等」を草案したベアテ・シロタ・ゴードンさんの半生を追ったドキュメンタリーです。東京YWCAから昨年CSW(国連女性の地位委員会)に派遣された臼杵ふたばさんの発案で、女性労働協会からDVDを貸りて実施しました。

当日は多様な年代の方が参加しました。参加者からは、「権利のために闘ってきた女性たちの活動に胸が熱くなった」、「憲法とジェンダーが関わっていることを学ぶとても貴重な機会となった」との声が寄せられました。

NL28pht10.jpg(左)「ベアテの贈りもの」公式サイトより(下)参加者の様子

平和と人権に関するキャンペーン・イベント

ご寄付のお礼とお願い

皆様のご支援により支えられています

いつも東京YWCAをご支援いただき、ありがとうございます。2024年度は、寄付目標額615万円のところ、11月末現在で490万723円を頂戴しております。いただいたご寄付は、それぞれの事業のために大切に用いさせていただきます。今年度も残すところあとわずかですが、事業の安定的な運営のために、寄付目標額達成に向け引き続きのご支援を心よりお願い申し上げます。

ご寄付募集中

NL28pht12.jpg 紛争・災害対応
ウクライナの子どもたちの絵画を全国で巡回展示するための運営費や、被災地への物資輸送に係る費用のために用いさせていただきます。
NL28pht13.jpg 日本語・学習支援「いちごの部屋」
外国ルーツの子どもが、日頃の学習に加え、体験の中で日本語を身近に感じながら楽しく学べるよう、様々なプログラムのために使わせていただきます。
NL28pht14.jpg 「支援者エンパワメントプログラム」
DV被害者を支援する人のためのスキルアップ研修、「支援者トレーニング」のために用います。支援者が学びを深め、より良い支援ができるようになります。

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