東京YWCA広報紙『Newsletter』vol.24
発行日:2022年10月15日(年2回発行)
【特集】女性の健康
YWCAフィットネスワオの女性専用屋内温水プールでは、肢体不自由の女性のための水泳プログラムを行っています。運動の機会を得にくい人たちがボランティアとマンツーマンで、水の中で身体を伸ばし、手足を自由に使い、水泳や水中運動を楽しんでいます。
水泳を通して喜びと自信を
東京YWCAは、スポーツは体力や強さを競う人だけのものではなく、幅広い年代の女性のために、年齢や体力、個性に合わせて運動の場を提供しています。その一つが肢体不自由者水泳です。
肢体不自由の女性のために。競技でなくレクリエーション
1954年に日本赤十字社主催の肢体不自由者(児)水泳の会場としてプールを提供したことがきっかけとなり、1957年「肢体不自由者水泳」を開設しました。主に養護学校(現・特別支援学校)に通う子どもたちを対象にしていましたが、1970年代に養護学校のプール施設の充実に伴い、成人女子の肢体不自由者を対象に変え、レクリエーションを目的に常設プログラムが定着しました。小中学生の希望者も多かったので可能な限り受け止め、今年で65年目を迎えます。当時の参加者が「陸上での歩みが遅くても、水の中ではスイスイ動けるように」と願って「あひるの会」と名前をつけました。現在は5歳以上の女性で、原則、日常起居動作のできることが参加条件です。当初からの変わらない目的として、競争や競技、リハビリではなく、肢体不自由者が水泳を通して喜びと自信を得られるようレクリエーションの一助として行っています。
参加者とボランティアが、ともに笑顔になれる場所
2020年からは、新型コロナウイルス感染症の影響で、休止と再開を繰り返しながらではありますが、あひるの会を継続しています。外出制限により身体を動かす機会が減ってしまっても、参加者はプールに入ることを生活の一部とし、YWCAを通してできた仲間やボランティアに会い、おしゃべりし、励まし合いながら、水泳や水中運動を続けています。
ここ数年はボランティア不足が課題となっています。ことに車椅子の参加者も多く、水中だけでなく陸上でもボランティアの役割が重要です。これからも「指導する」「指導される」のではなく、共に悩み、共に喜びを分かち合えるよう心のつながりを大切にしながら、あひるの会を継続していきたいと考えています。
肢体不自由者水泳「あひるの会」
浮けた 泳げた 気分爽快。一人ひとりに合った運動
毎週木曜日14時から15時と土曜日16時から16時50分に通年で実施しています。参加対象は女性で、小中学生が2人、20代から70代が7人、あひるの会を卒業した卒業生もフリーで泳いでいます。サポートするボランティアは40代から60代の9人です。シャワー室での水着の着脱や移動、プールの入退水等をボランティアが介助し、マンツーマンで水泳指導や水中介助を行います。車いすの参加者がプールに入る際はボランティアが2人または3人で両脇、足元を支え移動を介助します。プールの中に入れば重力から解放されお互い笑顔。「こんな風な泳ぎはどうかしら」「どんな介助がいいかな」など参加者とボランティアが相談しながらその人に合った泳ぎを見つけていきます。参加者の笑顔や泳げた時の喜びはボランティアの喜びにもなっています。
水深3.5mの所で浮具を使って運動
水に慣れることは身の安全にも
参加者から「自宅のお風呂場で足を滑らせ浴槽の中に頭から落ちてしまったが、とっさに息を止め何とか顔だけを水面に出し、助けを呼べた」と聞いたことがあります。日頃から水に慣れ、呼吸調整を根気強く続けていたことが幸いし、身体の機能に応じた水中運動が身を守ることにもつながりました。
ボランティア募集(女性のみ)
ボランティアと一緒に水泳を楽しむあひるの会では、ボランティアの力が必須ですが、不足ぎみで参加者募集をかけられない状態です。特に木曜のボランティアを募集中です。18歳から50歳位までの女性で水泳が好きな方、体力に自信があり移動介助なら...という方、まずはご見学ください。
22年間の思い出
山田綾香さん(あひるの会参加者)
「あひるの会」には、5歳の夏から参加させて頂き、今年で22年目になります。職員やボランティアの方々には5歳から愛情深く温かく支えてくださったことに深く感謝しています。嬉しかったことは、泳げるようになったことです。普段はとても体が緊張しやすいのですが、プールに入ると緊張がほぐれ、ゆったりとした気持ちになり、帰り道に足取りも軽くなります。これからも皆さんに支えて頂くことに感謝して頑張っていきたいです。
まずは、泳ぐ前にゆっくり歩いて水に慣れていきます
趣味の水泳を生かしてボランティア
土居崎恵美子さん(あひるの会ボランティア)
イチ、ニのサン。皆で呼吸を合わせプールへ(右端が土居崎さん)
Topics
東京YWCAの最新の活動の中から、注目の話題をお伝えします。
発達に課題やニーズのある子どもの「にじいろ教室」
体操教室「のびのび」が新たに加わりました
にじいろ教室は、子どもたちに好きなことを自分らしさを大切にしながら楽しんでほしいと願って実施している体験活動です。それぞれのプロが指導し、療育スタッフが発達に課題やニーズのある子どもの特性に配慮してサポートしています。前年度まで陶芸、ヨガ&ダンス、にじいろキッチン(料理)、にじいろアート(絵画・造形)の4クラスを実施していました。
2022年4月に、運動に苦手意識のある子どもたちに身体を動かす楽しさを体験してもらうことを目的に「のびのび」を新設しました。月1回の教室に12人が在籍しています。毎月少しずつ練習している縄跳びでは手首・腕・肩の動き、ジャンプと、動作を分解するなど指導を工夫し、一人ひとり個別にアドバイスをしています。子どもたちは着実に上達し、自信を持って跳ぶ姿と笑顔が輝いています。
教室の最初と最後はみんなでラジオ体操!
夏の野尻キャンプ場から報告と感謝
3年ぶりに宿泊プログラムを実施
ふたたび子どもたちの声が響き始めました
リーダー・ボランティアも久々に野尻に集結
直前に感染者数急増で子どものみのキャンプを残念ながら中止。「ゆかりステイ」は4期実施してファミリーやグループ、個人が宿泊し、福島の子どもたちも水泳やカヌーを楽しみ、「カヌーキャンプ」は野尻湖一周。他団体の利用も複数受け入れ3年ぶりにほぼ全ての施設を使ってプログラムを実施しました。新設した玄関の手洗場は生活でもプログラムでも大変重宝しています。実施にご協力くださった皆様、90周年記念・福島の子ども招待のご寄付をいただいた皆様に感謝申し上げます。
全日程、晴天に恵まれたカヌーキャンプ
福島の子どもたちも野尻を満喫!
インターンシップ、今年は3人です
社会福祉や女性支援に関心がある若い女性対象
今年度の応募は3人で全員採用しました。期間は約半年間ですが、DV被害者支援や東京YWCAの事業を通し、女性に関わる社会的課題をオンラインも活用しながら学んでいます。将来、社会の中で様々な人との関わりを大切にし積極的にリーダーシップを発揮できる女性になってほしいと願っています。
武蔵野センターへ見学に行きました!
アーカイブプロジェクト
ご寄付によって古い資料のデジタル化が進んでいます
1905年設立以来の史料は、東京YWCAの歴史というだけでなく、女性史・教育史等の研究資料としても価値あるものです。皆様からのご寄付により、現在、1901年から1933年までの写真約750枚や、1950年代の機関紙を専門業者による撮影・デジタル化することができ、また、データを保存・活用するためのデータベースソフトも導入できました。まだ数多く残るデジタル化の必要な史料のために、引き続きご支援ください。
データベースでの検索・閲覧が可能に