東京YWCA広報紙『Newsletter』vol.25
発行日:2023年7月15日(年2回発行)
目次
【特集】2022年度 活動報告
今号は、2022年度に行った事業の報告号です。新型コロナウイルス感染症対策で、オンラインの活用が進む一方、感染予防に気をつけながら、対面でのプログラムも徐々に増えた1年でした。ご支援ご協力くださいました皆様に心より感謝申し上げます。
平和と人権
武力によらない平和の実現
問われているのは、私たち一人ひとり。沖縄とどう向き合い、自分ごとにできるか
写真上段と右上下:6月の講演会から(左から4人目が神谷園長)。写真左下:辺野古埋め立てへの大抗議行動の様子
東京YWCAは、非戦、非核、非暴力によって、すべての人の人権が尊重され、共に生きる世界の実現を目指しています。沖縄の基地問題、南西諸島の武装化は、平和を実現する中で大きな課題の1つと認識しています。
2022年度は、6月の講演会で、宜野湾市普天間緑ケ丘保育園園長、普天間バプテスト教会の神谷武宏牧師から話を伺いました。2017年12月に宜野湾市の緑ケ丘保育園や普天間第二小学校に米軍機の放射能を帯びた部品、窓枠が落ちた事件がありました。幸い、負傷者はありませんでしたが、事故の原因究明も十分にされないまま、今も園児たちの上を飛び交っているのが現状です。同じく6月にSNSアクション「沖縄戦を憶えて発信」を実施し、市民の沖縄への関心を高め、課題解決に向けて連帯を強める働きかけを行いました。さらに11月の講演会では沖縄国際大学非常勤講師の川満彰氏を招き、沖縄戦での子どもたちの状況を通じて、 戦争で弱者になにが起きるのかを学びました。
これからも、沖縄の現状や、過去の出来事から学ぶプログラムを実施し、人々の痛みに共感する活動を継続していきます。
肌で感じること。感覚を原動力にすること
加藤初果さん(東京YWCA会員)
数年前、沖縄戦や基地問題を学ぶ名古屋YWCAのツアーに参加しました。ひめゆり平和祈念資料館で記録を見ている際に苦しくなり、逃げたいと思った自分が情けなくなりました。社会人になった私は学びの場や活動から少し離れてしまっているのですが、当時の感覚を思い起こす度に胸が熱くなり、事実を知り続けたいという原動力になっています。
「ひめゆりの塔」の前で。前列左が加藤さん
平和と人権
自分で決める、相手を尊重する
中高生や全国のシニア会員に向けて、「性的同意」のワークショップを開催
Rise Up!School Visits(RUSV)は、国連女性の地位委員会(CSW)に参加した20代中心の若い女性たち(RUSVユース)がファシリテーターとなり、ワークショップ形式で「人権教育としての包括的性教育」を提供するプログラムです。2022年度は、日本YWCA主催の2つのプログラムでワークショップを提供しました。8月の中高YWCA全国カンファレンスは10のテーマが設定され、RUSVチームは「対等なパートナーシップとは?」というワークショップを企画し、10人の中高生が集まりました。性教育に関しては、教育の現場でも学ぶことが少ないのが現状です。「性的同意」について自分で決定する大切さを学び、嫌なものは嫌と言える勇気を出すためのロールプレイを行いました。11月のYWCA会員フェスタでも、「パートナーシップと性的同意を考える」をテーマにシニア会員に向けてワークショップを行いました。被害者を非難するセカンドレイプの事例など、参加者から、日常的なアンコンシャスバイアスについて気づきがあったと感想がありました。性交同意年齢について、先進国での同意年齢引き上げを巡る議論の現状も紹介し、日本の法律上の矛盾点について取り上げました。
ムードは壊してなんぼ!性的同意を伝える
日吉菜緒さん(RUSVチームメンバー)
2019年3月のCSWに参加しました。その時、自分の包括的性教育についての認識不足を痛感し、特にユースたちへ性的同意を広めたい思いから始動したのがこのプロジェクトです。カンファレンスや分科会でのワークショップの運営経験や参加者の声を踏まえ、これからも継続していきたいです。一緒に企画に参加してもらえるユースも大募集中です。
会員フェスタ 手前2人がワークショップ担当
女性の健康
肢体不自由者水泳
水泳を通して共に笑顔でいられる場所
肢体不自由者水泳「あひるの会」は、競技ではなくレクリエーションとして行っています。2022年度は参加者9人、ボランティア11人が登録し、延べ78回の実施でした。参加者は、陸上では身体を動かすことが制限されているため、重力を感じない水中で身体を伸ばし、手足を自由に使い、水中運動や水泳を楽しみました。車椅子の参加者が多く、ボランティアの手が多く必要です。長く関わっているボランティアの高齢化もあり、介助・水泳指導の若手ボランティアを募集中です。前号の特集をご覧いただいた皆様より多くのご寄附をいただき、クローク内の車椅子用トイレ扉を新しくすることができました。心より感謝申し上げます。今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願いいたします。
水深3.5mの所でボランティアと一緒に
東日本大震災
東日本大震災から12年
ふくしまを忘れない─赤城修司写真展
震災から10年に実施を予定していた写真展は、2年延期し、2023年3月11日から東京YWCA会館ロビーで開催しました。福島在住の写真家で高等学校美術教員の赤城修司さんは、震災直後から放射能と向き合う福島の日常を撮り続けてきました。1年を9枚、全99点の写真で震災からの日々を振り返りました。除染作業の横を登下校する子どもたちや袋に入れられた汚染土が各戸の庭先に積み上げられている様子、その上で遊ぶ子ども、「がんばろう福島」の看板があふれた街は、10年の間に少しずつ日常を取り戻しつつあります。あのとき小学生だった子どもは、いまは大学生になりました。毎日は平穏に過ぎていくが、しかしあの10年は何だったのだろうか、と赤城さんは考えるといいます。
写真展は、3月11日から一か月間開催しました
青少年育成
2022年冬。キャンプ再始動です
YWCAのキャンプに欠かせない、リーダー養成のプログラムを実施
3シーズンのキャンプ休止期間を経て、2022年の冬休みにスキーキャンプを再始動するにあたり、12月10日にリーダー養成プログラムを実施しました。午前は身近な自然を多様な視点から見る大切さを学び、午後はレクリエーションとクラフトでリーダー同士のコミュニケーションを深め、スキーキャンプ参加者向けの準備会に臨みました。その後、キャンプに大切な安全と救急について学びました。準備会の前にリーダー同士が親しくなっていたことで、準備会で子どもたちと遊ぶ時も上手く連携がとれたという感想が聞かれました。キャンプが好き、子どもたちと遊びたいなど、さまざまな動機で集まった大学生たちをキャンプのリーダーとして育てていくのが、リーダー養成プログラムです。
リーダーが読む紙芝居に夢中になる子どもたち
野尻キャンプは90周年を迎えました
1931年に始まった野尻キャンプの90周年記念事業におきましては、多くの皆様からご寄付やご支援をいただきまして、ありがとうございました。90周年記念事業へのご寄付の総額は289万9131円(目標額1000万円)でした。2023年、野尻キャンプは、古き良き伝統を残しつつ、新しいキャンプスタイルを作っていきます。引き続きご支援賜りますよう、お願い申し上げます。
女性の健康
乳がん術後の女性をサポート
同じ病の人と出会えて、話ができてうれしかった
アンコアは乳がん手術後の心身の健康回復を目的に、専門家の講義、プールとスタジオでの運動、情報交換を行う8週間のプログラムです。昨年10月、3年ぶりに定員を縮小して開催。参加者10人は、意欲的に講義や運動に参加し交流を楽しみました。情報交換では一人ひとりの経験や思いを聞き合い、経験者ならではの情報を共有しました。アンケートでは、動きやすくなった、以前より快適な生活をしているとほとんどの人が答えており、半数以上が不快や痛さが軽減し、疲れにくくなった、睡眠が改善したと答えています。体力に自信が持てたことで、趣味やスポーツを再開したという声もありました。2023年度は10月開催を予定しています。
リンパ浮腫予防のセルフマッサージ法を学ぶ
乳がん手術後の女性のためのプログラム「encore(アンコア)」
社会福祉
電話相談「シニアダイヤル」
孤独や寂しさが少しでもなくなることを願って
シニアダイヤルは、専門家による研修を受けたYWCAの会員ボランティアが相談員をしています。2022年度も感染予防に努め、電話を受ける広いスペースを確保し、受付時間を短縮するなどの対策を継続して、閉室することなく活動できました。年間270日で、約1200件の相談を受けました。「大変な中、活動を続けてくれてありがとう」と感謝の言葉が多く聞かれる一方、「なかなかつながらない」という声もあるので、相談員の募集に力を入れたいと考えています。孤独を感じている人、誰かと話すことで人とつながる機会を求めている人には、身近な話し相手としてぜひシニアダイヤルを活用してほしいです。
月1回の研修。常に学び続けてこその相談活動
Report 2022年度 ご寄付・ボランティア報告
東京YWCAをご支援くださる皆様に心より感謝申し上げます。2022年度は寄付目標額389万円のところ、931万6863円のご寄付をいただきました。ご支援くださいました多くの皆様には深く感謝申し上げますとともに、今後とも東京YWCAへのお支えを心よりお願い申し上げます。
「2022年度 事業報告」のご案内
東京YWCAの事業報告は、ホームページに公開しております。今回の特集でご紹介した活動以外の取り組みについても詳しく掲載しておりますのでぜひご覧ください。