東京YWCA広報紙『Newsletter』vol.26
発行日:2024年1月15日 (年2回発行)
目次
【特集】にほんご学習支援
外国ルーツの子どもたちのための日本語・学習支援「いちごの部屋」では2020年から学生や20代のユースボランティアが増えて活躍しています。様々な年代のボランティアに、ユースの力が加わって対面支援がますます活発になっています。
日本語・学習支援とユースの活躍
「いちごの部屋」は、武蔵野市にある東京YWCA武蔵野センターで、外国ルーツの子ども(6〜18才)とその保護者を対象に週2回日本語・学習支援を行っています。2020年6月新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン支援を開始しましたが、これを契機に学生ボランティアが急増しました。学生たちは"オンラインでできるボランティア"を探していたのです。今では支援ボランティア30人の三分の一をユースが占めています。
二人三脚でスキルアップ。支援者同士の学びの場に
以前は1対1で支援していたのが、オンライン化でPC操作と指導で役割分担し子ども1人に対して支援者2人で対応しました。ユースは経験豊富なシニアボランティアと共に支援に入ることで、子どもたちへの支援を実地で学ぶことができました。また、ユースがPC操作したりオンライン学習しやすいように教材作成したり、積極的に関わりました。お互いに助け合い学びあい尊重しあう関係が深まりました。現在は、対面支援を中心に行い、ユースも1対1で支援を担当しています。
お兄さんお姉さん的存在。ユースにとっても居場所
子どもたちにとって流行のアニメやゲームなど好きな事で日本語を話して盛り上がる、これは日本語を学ぶモチベーションとなります。また、ユースは子どもと関わりが深くなるにつれて、参加の意義や喜びを感じ、もっと自分たちにできることはないかと考えるようになりました。そこで、ユースだけで集まり相談するユース会議を開始しました。支援で感じる疑問点を共有したり、体験プログラムの企画運営をしています。ここでの経験を糧にして社会参画できる人となることを期待しています。日本語支援のニーズは多く、社会の注目度も高いです。ここ数年で近隣大学とのつながりもできました。支援日や活動場所を増やすなど事業を拡大していくことも今後の課題です。
「いちごの部屋」ユース会議
気軽に話し合える同世代のセーフスペース
ユース会議とは、いちごの部屋のユースボランティアが集まり、学習支援の様子の共有や体験プログラムの企画をする場です。年3〜5回程度実施しています。2023年6月に実施した近隣の科学館に行くツアーでは、下見を行い、当日のタイムスケジュールづくりから当日の進行まで行いました。
参加した子どものほとんどは、学校以外の体験が少ないので、自分でICカードを使ってバスに乗る経験も新鮮な様子でした。楽しかった、また行きたい、という声が聞かれました。参加する子どもは、年の近いお姉さん、お兄さんのようなボランティアから勉強の経験やコツを聞いたり、時には一緒にはしゃいでみたりする時間があると、興味が広がりやすいようです。東京YWCAが掲げるユースのエンパワメントを推進することで、ユースがアイデアや工夫を実現していける機会を大切にしていきたいと思います。
多摩六都科学館にて機械の操作を体験
ボランティアも運営に関わり成長できる場所
島内蘭さん(いちごの部屋委員)
2年前、外国にルーツを持つ子どもたちの支援に携われる場所を探す中で、YWCAの活動を知りました。子どもに1対1で関わることで学びを深められそうだと思い、参加を決めました。もう一歩踏み込んだ立場から子どもの状況を理解して、活動のあり方について考えたいと思い、いちごの部屋委員会に入ることを決めました。他団体でもリーダーになることはできましたが、学生でありながら複数の立場から支援に関わることができるのが東京YWCA「いちごの部屋」でした。関わる人全員が成長できる場で、それを互いに見守りながら活動できることにやりがいを感じます。活動を通してインターセクショナルでインタージェネレイショナルな視野を得られるようにすることが今の目標です。
漢字を使って文章を書く練習中
ボランティア経験を活かして将来は教員に
佐藤諒一さん(いちごの部屋ボランティア・大学1年)
参加のきっかけは、教員になった際に参考になると考えたからです。ボランティア活動には興味があったと共に、外国人の子どもにどう接していくか、勉学についていけない子を置いて行くわけにはいかないと考えたため、参加をしました。体験をする前は、「教えられなかったらどうしよう」と思っていましたが、体験後は「一緒に」学ぼうという点に感嘆し、参加を決めさせていただきました。また、YWCAの野尻キャンプに参加した際には、小学1・2年生グループを担当しました。どのようにしたら、子どもたちと上手く接していけるのか、先輩方の接し方を間近で見て、学ぶことができました。6月から活動を始めたばかりなので、これから学ぶことを大切にして行こうと思います。
学校の定期テストに向けて勉強中
子どもたちに体験の場を、ユースには学びの場を
外国ルーツの子どもたちは日本語体験が少ないのが現状です。教科書で学ぶだけでなく、生活の中で生きた日本語を身につけるために、様々な体験プログラムを計画していきたいです。またユースボランティアが活躍するためにも充実した研修が不可欠です。日本語指導・在日外国人を取り巻く環境・法制度など計画しています。ユースの負担を軽くするためにも、参加費や交通費など補助が必要です。体験プログラムやボランティア養成を充実させるために、今後ともご支援をお願いいたします。
ゲームも楽しく日本語を使うチャンス
Topics
東京YWCAの最新の活動の中から、注目の話題をお伝えします。
「かめさんくらぶ」発達に遅れや偏りのある女児のための親子水泳
プールでは自然と親子のスキンシップが図れます
かめさんくらぶは、発達に遅れや偏りのある5歳から小学6年までの女児と母親の親子8組が参加しています。一人ひとりの成長や個性に合わせた指導で、水の中で身体を動かす楽しさを知り、少しずつ水泳の技術を身につけていくことで新しい発見と喜びにつながります。水慣れのグループは、母親に補助をしてもらいながら潜ることや浮く練習を、高学年の泳げるグループは、母親が子どもの後ろを泳いで一緒に水泳を習得しています。母親がプールに入れない時は、ボランティアが母親役をします。最後の遊び時間ではヌードル棒にまたがりフワフワしたり、水深3.5mのところまで潜って遊ぶ子どももいます。水の中は気持ちが良いと親子で心も体も軽くなり笑顔で帰っていきます。
一人ひとりの個性に合わせた指導
『夜明け前のうた』上映会
沖縄における私宅監置の事実とその背景。ゲスト3人を招いてアフタートークも
10月14日に2回上映で計83人が参加しました。この映画は、過去に私宅監置という制度のもと、精神障害とされた人たちが家族により離れなどに監禁され、尊厳を奪われた事実を追ったドキュメンタリーです。このような制度が次に行われないよう、過去の事実を知り、いのちの重みを考える機会としました。参加者からはこの制度が存在したことへの驚きや、映画に登場した当事者や家族たちの思い、人権とは何かなど、多くのことを考えた、という声が寄せられました。
トークは内容をより深く、会場全員と考える時間でした
障がい児「きょうだいの会」
きらりんこの上級生を対象に「オープンスペース」を新たに始めました
障がい児の兄弟姉妹が対象の「きらりんこ」では以前から不定期で上級生対象の日帰りの活動を行っていましたが、部活や塾などでそれぞれ忙しい上級生が休日に集まるのは難しい状況がありました。家以外で静かに過ごせる場所、「きらりんこ」の仲間と会える場所として活用してもらえないかと考え、今年の春休みと夏休みの平日、板橋センターの部屋を上級生に開放する取り組みを始め、数人が利用しました。これからも長期休暇の期間に実施したいと考えています。
課題や読書に集中!雑談に花が咲く時間の方が長い!?
勉強会「女性の人権について学ぶ」
シリーズ3回目の第1回 女性支援の現状を知る
9月30日に行政の婦人相談員から現状を伺いました。相談者が抱える困難は、暴力、様々な依存症、貧困、孤独・孤立など多岐にわたります。これらの問題には、福祉事務所、保健センター、シェルター、地域包括支援センターなど他の機関とも連携し、解決にあたっているとのことです。この回の参加者を対象に、10月と11月におしゃべり会を開催しました。安心して話せる環境で、講演の感想や疑問を出し合う時間になりました。
次回は女性の性的搾取問題がテーマです
ご寄付のお礼とお願い
皆様のご支援により支えられています
いつも東京YWCAをご支援いただき、ありがとうございます。
2023年度は、野尻キャンプ、日本語・学習支援、平和をつくるキャンペーンを中心にご寄付をいただき、寄付目標額640万円のところ、11月末現在で13,226,165円を頂戴しております。いただいたご寄付はそれぞれの事業のために大切に用いさせていただきます。引き続きのご支援を心よりお願い申し上げます。
ご寄付募集中

より多くの外国ルーツの子どもたちを支援していけるように、事業運営に使わせていただきます。

古き良き伝統を次世代に引き継いでいくために、施設の維持管理費用として使わせていただきます。

「DVサバイバーと協働するための支援者トレーニング」で、DV被害者の支援者の育成を行っています。
ボランティア募集中

日本で学ぶ外国人留学生と日本語で話す談話室や、家庭交流、日本語個別支援などの活動があります。