ひびきあう心

副園長 瀬口哲夫

 子どもがしてはいけないことをするから叱る、だらしないから怒る。愚図ってもダメだということを教えなければならないから叩く。しかし、叱る、怒る、繰り返すといった方法が効果を持たない子どももいます。子どもは、思うようにならない時だけでなく、体調がよくない時、疲れた時、夕方少し暗くなってもびっくりしただけでも愚図ります。泣き声が長く続くと、親がイライラしたり、この子さえいなければと思うことは普通にあることなのですが、母親ならなんとかできるはずでしょうと周囲が"完璧な母親"を求めてしまうと、母親によっては追い詰められて、子どもが可愛く思えないわけではないのに、焦りから怒鳴ってしまったり、手が出てしまうこともあります。
 子どもの泣き声に「どうしたの?」「子どもが愚図って本当に困ってるの。だれに相談したらいいかな」と軽く言葉を交わせるような相手がいればよいのですが、今は住宅事情からも難しいようです。今まで、近所の大人や子どもたちが担ってきた「子育て」が、母親による「孤育て」になり、そのなかで起きてしまう子どもの事件が報道されるようになりました。泣き声や怒鳴り声を聞いたという通報によって親も子も救われたケースもあるのですが、こちらは報道されていません。通報が入れば事情を聞くことが公共機関の仕事です。担当者に事情を聞かれた場合は、子どもの状態を話し、親がどう感じて、どう対応しているかを伝えれば大丈夫です。子ども自身の特性や特徴によって泣き叫ぶ場合もあり、親であっても、なぜ泣くかが分からないこともあります。不安が増大している今は通報も増えて、担当者も多くのケースに携わってきているだけに実情を理解してくれるでしょう。少しでも力になりたいと思っている人たちを信じて話すことによって何らかの糸口が見つかるかもしれません。市や区、警察には、親をより苦しめるDV(家庭内の暴力や攻撃)についての専門相談口もあります。親が辛い思いをしている時、一番苦しんでいるのは子どもです。大人たちには、子どものために一歩踏み出す勇気が必要な時があります。親はいつも完璧でなくても当然です。だから弱音を言って誰かに頼っているうちに子どもの特徴が分かり、期待だけでなく諦めもできるようになって、自分の子どもに合った'いい加減な子育て'ができるようになります。ついには'程よい親'になり、'母のしぶとさ'が育っていくのです。