ひびきあう心

2021年6月
副園長 瀬口哲夫

 廊下を「走らない!走らない!」と言いながら走っている子がいます。園庭で、急にバッタリ倒れ、動かなくなる子どもがいます。保育士があわてて近寄ると、「うーん、怪獣にやられた!ボクは負けないぞ!」と叫んで立ち上がり、すごい勢いで走り出す子もいます。子どもは溢れるエネルギーを発散させるチャンスを待っているようです。走れば、血液が全身を駆け巡り、元気な体ができます。もちろん、転んだり、ぶつかって怪我をすることもありますが、バランスを崩した時に身体を支える力も付きます。転んだ時に泣きだす子もいますが、「あー、転んじゃったね。びっくりしちゃったね。待ってるよ、立ち上がって、こっちに来て。応援しているよ」と優しく声をかければ、ショックも少しは軽減されると思います。転ぶ、立ち上がる、そんなことを繰り返しながら、助けてもらわずに自分で立ち直った経験は本人のプライドに繋がっていきます。
 大人や友だちに追っかけてもらって、走って逃げ回りたいという子もいます。追いかけたり、追いかけられたりすることで、周囲の人との絆を深めていきます。相手が欲しくて逃げていたくせに、友だちの方が自分より早かったりすると「追っかけてこないでよ~」と怒り出したり、追っていた子が思ったより相手が遅くてぶつかってしまい、喧嘩になることもありますが、そうしながら自分に今できることが分かり、相手との距離感がわかり、絆をしっかりとしたものにしていく姿も見せてくれます。
 一方、走りまわる我が子を見て、本当に落ち着かない、少しは絵本を見たり、みんなのように静かにブロックをしたりすることができないのかと心配される保護者の方もいらっしゃるようです。子どもの好きな遊びや落ち着いた環境を準備できないのは自分の至らなさにあるのではないかと考えてしまう方もいらっしゃるようです。しかし今は、ただただ走り回りたい、友だちが好きで追いかけてほしいというだけかもしれません。部屋の中は歩くようにしましょう。スーパーマーケットの中は周りの人の迷惑になるから走らないようにしましょうと声をかけることは必要ですが、今、子どもがエネルギーを発散させることで自分に出来ることを試し、その力を貯めこんでいこうという時期に入っているのであれば、発散できるような場所と時間を子どもに与える工夫することが必要なのだと思います。動きまわってエネルギーを燃やし、疲れてしっかりと眠り、食べることでエネルギーを補充していく毎日が、今は必要なのだと考えてみてはいかがでしょう。