ひびきあう心

2022年6月
副園長 瀬口哲夫

 新しく幼児組になった子どもたちが落ち着いてきた5月下旬、庭の木と木の間にロープをクモの巣状に張りました。綱渡りロープが完成すると、歓声を上げて我さきに上ろうとする子どもたち。並んで上ってほしいと声をかけると、さっと一列に並び、じっと自分の順番を待ちます。幅2メートル、高さ70センチのロープは簡単に上れません。上がるのに時間がかかる子もいますし、渡っている途中で動けなくなる子もいて、なかなか順番が回ってこず、10分以上待つこともあります。いつもならやりたいと泣き出す子でさえ、文句も言わず、じっと待ちます。それぐらい"やりたい"、"やってみたい"ということなのでしょう。
 恐る恐るロープを握りしめ、不安定なロープに足をかけます。足元はユサユサ、腕はプルプル、緊張感が伝わってきます。そして、ついにヤッター!という嬉しそうな叫び。ロープの上から私を見下ろして、「わぁー やったー!先生、小さくなったね。先生より高いよ!」と満足そうな笑みを浮かべます。怖くて見ているだけの子もいます。見ているのですから、上りたい気持ちはあるのでしょう。「どうする?やってみる?」と微笑みながら誘います。首を横に振る子には、「いつか上れるようになるといいね。上りたくなったら言ってね。」と声をかけます。
 やりたいことには、一人ひとりに『向き』があり、やってみたいと思う『時』があります。強いることなく、すぐに出来ることを望まない。"できる"ことより"やりたい"という子ども一人ひとりのサインに気づき、気持ちを受け止め、要求に丁寧に応える。それが私たちの保育の基本です。