ひびきあう心

副園長 瀬口哲夫

 したいことが思っているように出来なかった時のイライラや心疲れからくるモヤモヤ、相手が思うように動いてくれないという怒りが一気に爆発することはよく起こることです。今日は、4歳のAくんが、何か気に入らないことがあったのでしょう、部屋中にトランプを投げつけてしまいました。それを見た3歳のBちゃんが「Aちゃん、投げちゃだめだよ」と静かに声をかけてトランプをケースに入れ始めました。Aくんはますます怒って傍にあったカルタも投げました。周囲の子はちらっと見ましたが動揺もせず自分の遊びに夢中です。保育士が様子を見て、少し間をおいて、「どうしたのかな?Aくん。恐竜の本を一緒に見ない?見るんだったら、カルタを片付けてね。トランプを片付けるのを先生がお手伝いしてもいい?」と穏やかに声を掛けました。保育士も友だちも一緒に生活する中で、こんなことが起きても、Aくんがしばらくたつとどうなるのかという予測ができるのでしょう。Bちゃんも保育士も「投げないで」「片付けて」と短い分かりやすい言葉で具体的に言い、「どうしてこんなことするの!玩具をつかってはダメ!」などの言葉は使いません。また、「好きなものをあげるから」と交換条件を出したり、抱いて機嫌をとることもしません。次への行動への期待も持たせながら気分の切り替えを試みています。散らばりすぎるとAくんには簡単に片づけられないことが分かっているので、片付けを手伝うことも提案し、率先してゆっくり片付け始めています。
 この時、実はAくんも自分の行動に驚いているのです。こうした時の子どもはなぜそんなことをするのと理由を聞かれても混乱して説明できず、自分が何で怒っているのかも分からなくなってしまうことがあります。子どもが怒っている時に説得しても上手くいきません。叱れば叱るほど意固地になり、解決までに時間がかかってしまいます。怒りが静まったら、子どもの話を聞いてあげるのも良いし、何かをしたい時やしたくない時の伝え方、言い方を話してあげるのも良いでしょう。
 一方で、愚図られることに大人が堪えられずに、子どもの機嫌を取るために言うことをすべてを受け入れていると、子どもは何でも思い通りになると思い込んでしまい、別の方法を探す力が弱くなってしまいます。また、大人の都合によって、ある時は許され、ある時は叱られるでは子どもにルールが分かりにくくなってしまいます。いけないと思うことは一貫して伝えるようにしましょう。少し大変でも譲らない。そのうえで、何事もなかったかのようにさっぱり通り過ぎるのも大切です。
 そうこうしている間に子どもは色々なことを経験し、様々な人に出会って大きくなり、徐々に自分の気持ちを言葉にすることで激しい行動を多少ひかえられるようになったり、自分で気持ちを切り替えることを身に着けていくのです。様々な遠回りをした子が素晴らしい人生を見つけることもあります。愚図ってばかりいた子、病気がちで心配の多かった子、動きの鈍さをもっていて手がかかった子どもが「手がかかる大変な子だったらしいけど、お母さんはそんな自分を大切にして、お父さんも本当によく付き合ってくれた。だから親は大切」といつか伝えてくれることでしょう。その日を楽しみに待ちましょう。