ひびきあう心

2022年11月
副園長 瀬口哲夫

 子どもは時期が来ると自分の世界を広げるために親から離れていきます。一方で、親から離れられず、葛藤を長期間続けるケースがあります。親が子どもの気持ちに向きあえない。立派な子に育ってほしいという願望が強く、「子どもに良かれ」という親の気持ちで子どもに指示し、子どものかわりに親がやってしまう。子どもの要求をすべて受け入れてしまう。
こうした対応をされた子は、自信がなく、自分で決められず、何かにぶつかった時に自分で立ち上がって行動しようとせず、不安や不満が蓄積する。それを解消するかのように、周囲を攻撃する子もいれば、自分の中に籠ってしまう子もいるようです。
両親は遠方、夫とはすれ違い、近所とも付き合いがなく、話し相手がいない。まとまって眠れず、ママとすがって泣く子をあやしながら掃除や洗濯、誰かに助けてもらいたかったけど、何故みんながやっていることが私にはできないのかと自分を責めてしまう。逃げだしたいのに、子どもといると楽しいと周囲に嘘をついてしまう。子どもの気持ちを大切にしなければならないと分かっているけれど、とても出来ない。自分のことで精いっぱい。そんな自分が好きじゃないという親の声を随分聴きました。親は親で、様々な事情を抱え、精いっぱい生きていることが伝わってきます。
また、家庭はこうあるべき、親はこうでなければならないという呪縛で、自分がダメな人間に見えてしまうこともあります。かつ、周囲に話せない環境の中で押さえつけていた気持ちが、何かのきっかけで爆発した時に、子どもへの不適切対応といわれる言動が起きます。しかし、どんなに追いつめられても、子どもに手を出したり、罵声を浴びせることだけは我慢しなければなりません。こうした行為は、子どもだけでなく親の心も傷つけてしまうからです。大きく息を吸い込み、息詰まる今をなんとか乗り越えれば、明日がやってきます。ニッコリ笑える瞬間が来ます。
 専門家に相談する方法もあります。家庭支援に携わる公的機関の方も、保護者の気持ちを大切にしながら必要な情報をくれますし、助け手を紹介もしてくれます。私の気持ちなど分かってもらえないと思っても、話すだけ話してみて、利用できるものは利用した方が楽です。うっぷんを晴らすためにおしゃべりをしてスッキリしたら、なんとかやっていけたというケースもあります。
聖書には、「人が独りでいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」(創世記2-18)と書かれています。クリスマスを孤独に迎える方が少なくなるようにお祈りします。