2025年度4月園だより

始 ま り の 季 節 に

園長  清田 悦子

 「どんな色が好き?」ある日、Nちゃんがそばに来て、尋ねてくれました。「そうねぇ、赤ちゃんのほっぺの色とか、夕焼けの空の色とか...」と言いながら、ふと窓の外に目を移すと、冬をまた一つ乗り越えた大きな木々の枝先に新しい芽吹きの色。今年も満開のおじいさん枝垂れ桜、一斉に春を謳歌する小さなたくさんの花たち。まきばの庭にとけこむように遊ぶ子どもたちの風景も、実に色とりどりです。

  この3月、泣いたり笑ったり、時にはけんかしたりしながら大きくなった19人の子どもたちが卒園していきました。その子しか持っていない「たからもの」の色。だれとも比べることのできない、世界でたった一つの色を輝かせながら巣立っていく一人ひとりを、眩しい想いで見送りました。

 そして4月、新たに19人の子どもたちと、6人の新職員を迎えました。進級した子どもたちも、今までと違う先生やお友だちとの出会いの春。97人97色の子どもたちとの新しいまきばの暮らしが始まります。 新しい場所に安心できる人と自分の居場所を見つけるまで、泣きながら思いを表す子どももいるでしょう。その傍らにはいつも保育者がいて、子どもが全身で表す自分の気持ち、ことばにならない思いもくみとって応えます。「泣いてもいいよ、そばにいるから大丈夫、大丈夫」。

 大好きなお母さん、お父さんと離れても、受けとめてくれる、いつもと変わらない先生がいる。顔をのぞきこみ、背中をさすってくれる少し大きいお姉さんや、ちょっとおどけてみせたり、庭でつかまえたカナヘビを見せてくれたりするお兄さんがいる。さっきまでの涙が少しずつ乾いて、微笑みがこぼれるような瞬間が積み重なって、やがて、子どもたちは、ここが安心できる「もう一つのおうち」のような場所だということを感じ取っていきます。  

 そこから始まる、子どもたちの挑戦、冒険。心の中にしっかりと「安心基地」を持ちながら、自分で立ち上がり、一歩一歩、その子のペースで歩み出していく。子どもがその目でみつけたこの世界の不思議に一緒に驚き、一緒に泥だらけになって遊ぶ先生や仲間との世界。子どもが自分で選んだあそびに、心ゆくまで夢中になれる場所。まきばは、97人の色とりどりの子どもたちにとって、そんな場所であり続けたいと思っています。

 始まりの季節、子どもたちに歩幅を合わせて、一緒に歩んでいくことができますように。 どうぞよろしくお願いいたします。