2025年度9月園だより
「懐かしい場所」
園長 清田 悦子
毎年夏の恒例となった卒園生の集い「まきばリユニオン」。3月に卒園していった小学校1年生から、高校3年生になったまきば保育園第1期生まで、今年はなんと111人もの子どもたちとたくさんの保護者の方たち、退職した職員も「懐かしい」場所に帰ってきてくれました。
久しぶりの再会に、最初はちょっと緊張した面持ちだった小学生も、すっかり背が伸びて大人びた中高生も、でこぼこの園庭に飛び出して、かつての幼い自分たちを見守っていたあの大きなエノキの木を見上げると、すぐに「あの頃」が戻ってくるようです。
迷わず泥場に行って、あの頃と同じように、穴を掘り始める小学生たち。自分たちの力でどこまでも掘っていく...地下に秘密基地を作るんだ。地球の裏側までいけるかも。ここはワニがいるジャングルの沼だよ...想像の世界は限りなく広がって、毎日ワクワクしていたよね。セミを採るのが相変わらずプロ級なのは、かつての虫博士たち。じっと耳を澄ませて、セミのいる場所を突きとめてから動くんだ。部屋の中では折り紙やLaQで器用に手を動かしながらおしゃべりをする高校生。びっくりするほど複雑なオリジナル作品を見せてくれる。ギター持参の高校生や若きピアニストたちのセッションがどこからともなく始まる。K先生の赤ちゃんを交代でお世話してくれる中学生。まきばの先生になって帰ってきてくれる日ももうすぐそこかな。
日々の保育の先に、この子どもたちが「おとな」になる未来を描くことの大切さを、無限の可能性に満ちたまきばの卒園生たちが教えてくれます。それは大人になったとき必要なものを逆算して与える保育ではなく、今目の前にいる子どもの中に、他の誰にもない素晴らしい個性、感性があることを見出して、子どもが自分自身で感じ、選び、夢中になって遊び、大きくなる力を信じる保育です。
リユニオンの最後に語られた、前まきば園長の大沢千佳子先生のことば...「"懐かしい場所"と感じるのは、ただ時が経ったからだけではなく、そのままの自分が"大切にされていた、愛されていた"という温かい記憶がそこにあるからではないでしょうか」
たとえ幼い日の記憶が薄らいでいっても「まきば」は小さかった大切なあなたのことをずっと覚えている。いつの日か「おとな」になり、ふと立ち止まって深呼吸をしたくなるようなときが来たら、「懐かしい場所」はいつもここにあるということを思い出してほしいと願っています。