園だより

「まきばのかぜ」

2021年3月
園長 大沢 千佳子

樹 の あ る 保 育 園

 

『まきば』の園舎のある場所は、かつて、すもも、栗、柿、みかん、あんずといった実のなる木や松、つつじ、白梅、八重桜が無造作に植えられていました。枝をのばし葉を茂らせる夏、木漏れ日の中を歩く道は迷路のよう。葉陰から幹の後ろから何かがぬっと現れてきそうなスリル。意外な所に隠れるようにあった築山は、想像力をかきたてるに十分。そこは、人の心を引きとめる懐かしさと温かさのある場所でした。当時を知る人は,今の姿に隔世の感を覚えることでしょう。
2012年,小さな雑木林は『園舎』へと姿をかえたのでした。新しい時代を拓くために必要な決断でした。子どもたちのための南に向いた園舎、南に広がる園庭誕生へとつながりました。

 園庭を渡る風と惜しみなく降り注ぐ陽の光、そして乾いた地面を潤す雨は、わずか八年の時の流れの中で、樹々をさらに大きく、大きく育てました。種子が落ちた場所も、高さも幹回りも枝の張り方もそれぞれ違う樹々は、私たちと共に生きている大切な存在です。
子ども達が大好きなブランコが揺れるエノキは大らかな樹。一人黙って下に立ち、真っ直ぐ枝々を見上げると、なぜかホッとします。 黙して語らない樹に尋ねてみたくなります。「あなたは、この場所に舞い降りてから、何人の子ども達と出会い一緒の時間を過ごしてきたのですか? ごつごつとした根元で身をかがめて薄緑、橙、赤の丸い実を夢中で集めている小さな手は見えますか? あなたの息遣いを聞こうと幹に耳を当てる子どもたちの澄んだ心を感じてくれていますか?」
先日の剪定で重くなりすぎた枝を払い、今、芽吹きの春を待つエノキ。 新しい枝が延び、その枝先におさな子のような若葉を開く時はもうすぐ。次の春、そして次の春。やがて大きな緑陰を届けてくれるはずです。 時代が移り人々が行き過ぎても変わらずに、根は土を抱きながら地中に深く深く張り、悠然としてそこにあるでしょう。

2020年度は大変厳しい一年でしたが、皆様のご理解とご協力を得て無事終えることができます。子ども達のためにと、ご一緒に歩んでくださいましたことを心から感謝申し上げます。

3月。希望の春の訪れとなりますように。

一         二       三            四
春の枝に花あり   花散りて後に  嗚呼憂いに沈むものよ   春の枝に花あり
夏の枝に葉あり   葉落ちて後に  嗚呼不幸をかこつものよ  夏の枝に葉あり
秋の枝に果あり   果失せて後に  嗚呼希望の失せしものよ  秋の枝に果あり         
冬の枝に慰めあり  芽は枝に顕はる 春陽の期近し       冬の枝に慰めあり
                                   内村鑑三

 

 

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