園だより

 

 

「まきばのかぜ」

2022年6月
園長 大沢千佳子

三人の新しい仲間

 先日読み終えた本にこんな一節がありました。「(陣取りや椅子取りなど)居場所を奪うゲームが他のゲームに比べ、きわめて残酷であることがあまり知られていない」(北山修 精神科医)鬼になった時に感じた寄る辺なさやひとりだけになってしまったような心もとなさは、居場所がないと感じたことからきていたのかとあらためて納得をしたのでした。

 この4月5月6月と続けて三人の子ども達がたから組(年長児の総称)に加わりました。幼児最後の一年を新しい園で過ごすという決断。慣れ親しんだ園で仲良しの友達と過ごし卒園を迎えるのではなく、『まきば』へと舵を切る決断が熟慮に熟慮を重ねた結果だったことは想像に難しくはありません。面接でお話をするなかで共通していたのは、本人の気持ちも確かめながら一年であっても、『まきば』で過ごさせてあげたいという子を想う親としての思いでした。樹々に囲まれた園庭を走り、小さな生き物に出会い、沢山の不思議を発見する毎日。想像力を働かせ作り上げる遊びの世界。『まきば』で思いっきり遊び過ごす一年には、一緒に笑い、泣き、嬉しい、悲しい、悔しい、様々な気持ちを共にする友だちと先生がいます。三人は、少なからずの緊張感と寄る辺のない気持ちを時に表しながらも、自身の力でその子のやり方で心の扉を開けようとしていることが伝わってきます。ありのままの姿を少しずつ見せてくれるようになってきました。お腹の中から声が出るようになってきています。『まきば』が三人にとって心置きなく過ごせる大切な居場所となる日が待ち遠しいです。『まきば』の子ども達が皆そうであるように。

 梅雨の雨に降りこめられた路地を歩くと、家々の紫陽花がほっと灯りをともしたように咲いていました。今年も、子ども達はあの伝説の蛙に再会できるかしら。園庭の金木犀の木に密かにつくられた巣のヒヨドリの卵は、無事ヒナがかえり、大空へと巣立っていくことができるかしら。『まきば』はいつも心が弾むような気になることに溢れています。

 今月もお健やかにお過ごしくださいますように。