2025年度8月園だより

「へいわ」のかたち

園長 清田 悦子

2025年、終戦から80年目の夏。 目の前の子どもたちの笑顔をかけがえのないものと感じながら、ふと、今この同じ瞬間を生きて いる子どもたちに想いを馳せます。同じ空の下、この世に生まれた時から戦禍の中で震えている 子どもたちがどれほど多いことか。そしてその親の悲しみを思うと胸が締め付けられるのです。

――この夏、『へいわってどんなこと?』(浜田桂子著・童心社)という絵本を、幼児組の子ども たちといっしょに読みたい、と思っています。 「へいわってどんなこと?」という問いかけに、私たち大人はどう応えるでしょうか。 子どもの「ぼく」は「きっとね、へいわってこんなこと」と語ります。  

 「だいすきな人に抱きしめてもらう」「おなかがすいたら誰でもごはんが食べられる」   「おもいっきりあそべる」「いやなことはいやだって、ひとりでもいけんがいえる」     「わるいことをしてしまったら、ごめんなさいってあやまる」「朝までぐっすり眠れる」

「へいわ」のかたちは、十人十色の子どもたちの日々の生活のなかにある「生きる喜び」なのです。  そして「ぼく」は、世界中の子どもたちから「へいわ」を、生きる喜びを、根こそぎ奪う大人 たちにむけて、力強い決意を発信しています。

『いのちはひとりにひとつ。たったひとつの重たいいのち。 だからぜったいに、ころしたら いけない。ころされたらいけない   ぶきなんか、いらない。』

いのちより優先されるものは何もない。「へいわ」は、一人にたった一つのいのちが、まるごと認められて大切にされることなのです。おとなの役目は、生まれてきたすべての子どもたちが「へいわ」を謳歌しながら育っていくことを保障することです。  

でも、子どもたちの世界に争いがないわけではありません。毎日の生活の中でも、気持ちの行き違いからしょっちゅうけんかや言い合いが起こります。ぶつかり合いながら、友だちの考えていること、感じていることは自分と違う!ということに気づくことが大切な初めの一歩です。自分の思いを伝える。相手の言葉に耳を傾ける。なんとかして暴力によらず、話し合う。思わず友だちを叩いてしまったとき、相手の涙を見て、自分の心が痛む経験をする。収まらなくなってしまった けんかの出口を、他の仲間が「じゃあこうしたらどうかな?」と見つけてくれることもあります。 けんかをしている間はやっぱり苦しい。けんかが終わったらやっぱり嬉しい!違うからぶつかるけれど、違うから楽しいんだ!そんな気づきを繰り返しながら、お互いの違いを認め合い、多様な仲間とともに生きる「へいわ」の人が育っていくのだと思います。  絵本の最後のことばを、子どもたちだけでなく大人も一緒に味わい、心に刻みたいと思います。       

『へいわって ぼくがうまれてよかったっていうこと。 きみがうまれてよかったっていうこと。 そしてね、きみとぼくはともだちになれるっていうこと。』