園だより

「まきばのかぜ」

2020年6月
園長 大沢千佳子


「まきばは、やっぱりいいなあ。」

 6月1日 月曜日。二か月近くにわたった休園期間を終え、子どもたちが登園してくる日。雨が木々の葉をやさしくゆらす静かな朝を迎えました。 受け止めの準備を終え門の方に目を遣ると、一人、またひとりと、お母さんやお父さんと手をつなぎながら少し緊張気味に登園してくる子どもたち。そのいとけない顔には、少しばかりの不安と懐かしい気持ちが垣間見えて、背丈も伸びて、ちょっとばかりお兄さんお姉さんになったようにも思えて。毎日在宅勤務と育児に頑張っていらしたお母さんやお父さんとは笑顔で久しぶりの挨拶を交わし、『まきばは、やっぱりいいなあ。』というお父さんがつぶやいた一言に、「みなさん、本当にお疲れさまでした。おかえりなさい。」との思いで胸がいっぱいになりました。 期間中、子どもたちと皆さんへの想いを「まきばメッセージ」に込めて送りつづけた先生たちも、再会を ずっと待っていました。二か月という時間の長さを痛いほど感じた日でした。

 2020年という年は、子どもたちにとっても記憶に残る年となるのでしょうか。子どもたちも知っている言葉、「ソーシャル・ディスタンス」。調べてみると、もともとは社会学用語で「特定の個人やグループを 排除する」「社会での心理的圧迫がある距離」という意味。ソーシャル・ディスタンシングであれば、感染予防戦略を表す言葉で物理的距離を保つことを指す。とあります。 WHOは「ソーシャル・ディスタンシングではなく、フィジカル・ディスタンシングと言おう。物理的な距離は離れていても、人と人とのつながりは引き続き大切にしてほしい」というメッセージを出しています。保育園でも、登降園時に感染予防を優先させる流れをつくったことによって、園や家庭での子どもの姿について話しをしたり、皆さんが自由に情報交換をしたりといった「まきば」の日常の一部が消えかかっています。しばらくは、必要なルールを自らに課しながらその居心地の不安定さにも耐えて、毎日を送らねばならないでしょう。 「まきば」に戻ってからしばらくは、子どもたちは静かで、遊びもあのダイナミックさは影を潜めていました。けれど、『まきば』に流れる時間を過ごすなかで、遊ぶことへの集中力や気持ちを刷新する感覚を取り戻したようです。二週間余りたった今、園庭で思いっきり駆け回る姿や群れて遊ぶ姿、先生と一緒にゆったりと過ごす姿、弾んだ声が響くようになりました。「まきば」本来のいい景色が戻り始めています。

 病を得た人は、見えなかったものに気づき、感性が際立ってくるといいます。今私たちは、世界中が苦しむ大きな困難を得て、見えなかった人間の弱さや醜さ、そしてあたたかさや優しさにあらためて気づかされています。未来を生きる子どもたちのために、今日も私たち大人を信じて屈託のない笑顔で遊ぶ子どもたちのために、やはり一人ひとりから始めなければいけないのではないでしょうか。自分自身の内面を問い直す。何を大切にしていくのか。漫然とではなくて、考えながら、試行錯誤しながら。暗礁に乗り上げている船を望む港に辿り着かせるために。

あじさいの季節。今月もどうぞお健やかにお過ごしくださいますように。

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