2025年度6月園だより
上へ、下へ、と伸びていく
園長 清田悦子
つい先日まで萌黄色だった庭の木々は、いつのまにか青々とした枝をどこまでも伸ばして、子どもたちに幸せな木漏れ陽を届けてくれています。そして子どもたちもあちこちで、目を見張るような変化を見せてくれています。
園庭でシャボン玉をトコトコと追いかけているあの子、4月の初めには丸太につかまり立ちをしていたっけ。玄関で、自分マークの靴下を見つけ、ちょこんと座って、小さな手で靴下を引っ張っている子どもが..."できた!"と顔をあげた瞬間の、何とも誇らしい表情! お部屋では、保育者の服の裾をつかんでもじもじとしていた子どもが、今は、小さなお友だちに紙芝居を読んであげている。そんな姿を見ると、若い枝が上へ上へと伸びていくように、どの子どもの中にも自分で伸びていく確かな力が備わっているのだと教えてくれます。
何かが「できる」ようになるときの喜びや自信は素晴らしいものです。でも一方で、保育者である私たちは、「できる」ようになること、「上に伸びること」に囚われすぎていないか、と時々立ち止まって考えたいとも思います。
まきばを巣立ってしばらく経ったころ、ランドセルを背負った子どもたちが「ただいまー」と懐かしい顔を見せてくれる時があります。付き添っていらしたお母様に話を聞くと、学校という全く新しい世界にまだ慣れていない様子。朝はなかなか行きたがらず、お母様がお仕事を調整し毎日家を早めに出て、学校まで一緒についていったりしている。学校から帰ると夕食の前にうとうとと寝てしまうほどで、よっぽど頑張っているんだと思います、とのことでした。
そんなときは子どもが、「上へ上へ」枝を伸ばすのではなく、「下へ下へ」深く根っこを伸ばしているときではないか、と思うのです。「できるようになる」という目に見える成長ばかりでなく、子どもたちはときに心の中で葛藤したり、それまで経験したことのない壁にぶつかったりしながら、それでも自分の人生を自分らしく生き抜いていくための、心の根っこを伸ばしていくのだと思います。 私たちは、子どもたちがどんな姿を見せるときも、その子どもに秘められた限りない力を信じて、傍らで応援し続けたいと思っています。