園だより

 

 

「まきばのかぜ」

2023年3月
園長 大沢千佳子

エピローグ
―まきばを巣立っていくときに伝えたいこと―

一人ひとりにその子だけの物語があります。
たから組19人の子どもたちの物語のエピローグが書き上がるのも、あともう少しです。

今、季節は芽吹きの時。萌え出でる木々の芽の色は多彩です。浅緑や濃い緑や赤みの混じった色を見つけることもあります。まきばの春を伝えてくれる幾本もの桜も、花の色合いは様々で、咲く時期にも早い遅いがあります。自然の姿に倣うかのように、『まきば』の子どもたちは、それぞれが違うことを当たり前のこととして育ってきました。
季節が巡る中、その笑顔と涙で彩られた保育園での毎日は他の何ものにも代えがたい素晴らしい時であったと、今自信を持ってそれぞれのご家庭にお伝えしたいと思います。 
まきばで過ごした時が、これから子どもたちが歩き出す世界にあっても心と身体をあたたかく灯すものとなってくれるよう願っています。

皆さんにお願いがあります。 初めて子どもと出会い抱いた、その奇跡に涙した日のことを
もう一度思い起こし、親として歩んできた六年間の道のりを辿り、わが子の最初の物語の
エピローグを書き上げて欲しいのです。それは、きっとその家族だけのかけがえのない物語となることでしょう。そういう親の在り方こそが子どもたちを支えていくのです。
『家族を信じること、隣人を信じること、そうした信頼に支えられた自分を信じること』
(鷲田清一著書から)今の時代にあって、何よりも大切なことを伝え続けてください。

私の『まきばの風』への原稿掲載もこの3月号で最後となります。 
今一番伝えたいことは何かを問いながら、伝えうる表現に悩み、いつも印刷当日の朝ギリギリに仕上がる!の連続でした。私が言わんとするところを汲みとり、優しさとあたたかさと思慮深さをあわせ持った絵を添えてくれた小谷野先生。10年にわたって発行してきた園便りは
小谷野先生の挿絵がなければ完成しなかった、そう思っています。
4月からの新しい『まきばの風』にも、素敵な挿絵が描かれていくことでしょう。
そして、伝えたいことが皆さまに届いたかどうか、いつも気になっていました。そんな私の
心の内を知ってか、時折「読みました。」「伝わってきました。」と声をかけて下さったお父さま、お母さま。その一言がどれほど嬉しかったかことか。皆さまの器の大きさに助けられ、
書き続けた10年でした。長い間、お読みくださりありがとうございました。

皆さまのお幸せを祈りつつ。心からの感謝を込めて。