2026年度9月園だより
夏の終わりに思うこと
園長 清田 悦子
夏の始まった頃、園庭の地面にいつの間にか空いた、無数の小さな穴を見つけた子どもたち。 この穴、なに?昨日はなかったのに...地面に顔を近づけてのぞき込んだり、長い棒や石を突っ込んだり。大きい子どもが、これはセミが出てきた穴なんだよと教えてくれます。小さな子どもたちにも手の届くところに、不思議な抜け殻の贈り物をくれたセミたち。虫取り網を携えた子どもたちの相手をたっぷりしてくれたあと、今は秋の虫たちにそっとバトンを渡そうとしています。
夏休みの終わりには、恒例の「リユニオン(卒園生の集い)」がありました。今年も小学校1年生から高校3年生まで、実に100人近くの卒園生が帰ってきました。背丈がすっかり伸びて大人っぽくなった子も、卒園したとき何組だったかを忘れてしまった子も、ちょっぴりはにかんで「ただいま」と挨拶をする子もみんな、ここに来たら、夢中に遊んだあの頃に戻れるから不思議です。庭で見上げるエノキの木から降り注ぐ蝉しぐれ、立ちのぼる土や緑のにおいは、あの頃とちっとも変わらない。普段は心の奥にしまっていて忘れていた、小さいころワクワクしたこと、泣いたり笑ったりして一緒に過ごした頃のことが、色や匂いや音とともに鮮やかに戻ってきて、いつの間にかあの日のように、全力で駆け出す子どもたちでした。
会のあと、小学校高学年になる卒園生のお母さまが、こんなことを伝えてくださいました。 「今はあらかじめ決められた"やるべきこと"に追われている毎日です。それでも子どもがなんとかバランスを保っていられるのは"心の自由"を失っていないからだと思います。他人からの評価に縛られずに、自分の心の奥から湧き上がる"面白い""知りたい""やってみたい"を持ちつづけられるのは、まきばで育ったからだと、いま改めて思うんです」
生活と遊びの中で、子どもが自分で考え、選んで決めるということ。「面白い」「やってみたい」というワクワクした気持ちから始まる遊びに、時間を忘れて夢中になること。失敗や葛藤を乗り越える経験、まわり道や試行錯誤の時間も保障すること。子どもが自分の意見を持ち、言葉で伝えられること、その声に耳を傾けてくれる大人と仲間がいるということ・・・日々の保育の積み重ねを通して、子どもたちの奥深くに、ゆるぎない自己肯定感とともに、この世界への信頼感が育ち、自分らしく人生を歩んでいくための「心の自由」が根ざすように願っています。
日本や世界の各地で起きた未曾有の自然災害によって大切な人や住む家を失い、嘆き悲しむ多くの方々のこと、とくにそこに生きる子どもたちとご家族のことを心に深く覚え、一日も早い復興と 慰めをお祈りします。子どもたちが生きていくこの世界の未来が希望と安心に満ち、 互いに思いあい支え合う、平和な世界でありますように。