園だより

2017年3月
園長 大沢千佳子

水ぬるむ三月

奥多摩の春まだ浅き山道を歩いてきた子ども達のざわめきが、ひのき林の中から谷に沿って下りてきます。一向に姿は見えないけれど、確かにたから組。石窯ではハーブと和風の鶏肉が香ばしく焼き上がり、味噌汁にはあとお豆腐を入れるばかり。
あの急な石段登れたかなぁ。
道なき道も歩けたかなぁと思いを巡らしていると、「園長先生――!」と元気な声を上げながら山道を一気に駆け下りてくる笑顔の子ども達。お別れ遠足。天気は晴れ。00213.tif

振り返ってみますと、2016年度は試されることが続いた一年でした。
雨の運動会、感染症流行の波。子ども達に「大好きな園庭で、私達は頑張ったよ!
楽しかったよ!」という思い出を持ってもらいたい、何とか感染をくい止め、子ども達とご家族が元気な日常を取り戻せますようにと、職員が心をひとつにして頑張りました。しかし、至らなかったところもあり、解決すべき課題も明らかになりました。 
一人ひとりの子ども達が、豊かな時間を過ごすことができただろうか。
保護者の皆さんは、安心してお子さん達を私たちに委ねることができただろうか。
働く私達は、やり甲斐と実感をもって「子ども達が主人公の保育園」づくりに取り組み、その専門性を開拓できただろうか。良かったことそうでなかったことを見極め、次年度も子ども達の心の声に耳を傾け、保護者の皆さまから届く声を糧にして歩んでまいりたいと思います。
この一年間の皆様からのお支えに、心から感謝申し上げます。

水温む3月。園庭では、早咲きの桜が淡い春色を届けてくれています。桜に再会すると想い出すのは染織作家の志村ふくみさんの言葉。その著書『色を奏でる』の中で、
「花びらから美しい桜色を染めるのではなく、あのゴツゴツした皮や枝から。
花はすでに咲いてしまったのだから、そこからは色はでないのである。」と
語っています。
今年卒園を迎える19人の子ども達も、
ここでの自由でのびやかな生活の中で蒔かれた種を
これから歩む長い人生の中でしっかりとした幹に育て、それぞれの色の花を咲かせる
ことでしょう。花びらはその人の語る言葉であり、生きる姿なのだと思います。
いつの日か、その花びらに出会いたいと願っています。

桜咲く日、希望に満ちた卒園式となりますように。