2025年度12月園だより

大切なものが灯るクリスマス   

園長 清田 悦子

12月、まきば保育園ではクリスマスを迎える準備が始まっています。園庭のもみの木は素朴な木製のオーナメントと光をまとい、廊下には「ヒンメリ」とよばれるフィンランド 伝統の手作りモビール、光を通す紙でできたステンドグラスのような「ローズウィンドウ」、レンガの暖炉の上のアドベントクランツなどが飾られ、20日のクリスマスお祝い会に向けて、お部屋からは子どもたちのクリスマスキャロルが聴こえてきます。

まきばにはプレゼントを持ったサンタさんは登場しないけれど、毎日少しずつ、美しい絵本のページをめくるように加えられていくクリスマスのエッセンスに、子どもたちは心を踊らせます。庭のログハウスはイエスさまの生まれた「馬小屋」です。クリスマスの夜、寒く真っ暗な馬小屋に、小さなキャンドルの光がどんな景色を照らし出すでしょう。働く大人は年の瀬に向けてますます忙しくなるこの季節。保護者の方にも、お迎えにいらしたそのひとときは、子どもと楽しくことばを交わしながら、クリスマスに向かう一日一日をご一緒に味わって頂けたらと願っています。

 年長・たから組のこどもたちは、保育者と一緒にクリスマスの「降誕劇」を作っていきます。「なぜイエス様は神様の子どもなのに、寒くて暗い馬小屋に生まれたの?」「おなかの大きいマリアさんに馬小屋を貸してあげた宿屋さんって、優しいね」...子どもたちは、世界で最初のクリスマスの出来事を思い浮かべ、登場人物の気持ちや、神様がこのことを通して伝えたかったことに想像をめぐらせます。決められたセリフや毎年同じシナリオはありません。自分で役を選びセリフを考えて、その年の子どもたちにしか作れない降誕劇が生まれていきます。

恥ずかしくてみんなの前には出たくない、ライトに照らされるのは苦手という子どもにも、 その子なりの参加の仕方があります。全員そろって劇を上手に発表することが大切なのではありません。たとえそこにいるだけだとしても十分なのです。子どもたちは、この一年、自分の気持ちを大切にされながらその子らしく日々を重ねてきました。どの子どもも、かけがえのない大切な存在として愛されているというクリスマスのメッセージを、すべての子どもの心に届けられたらと思います。

 さて、降誕劇の中で、少女マリアの目の前に天使が現れ「あなたは神の子を生みます」と告げられるシーンがあります。美しい場面ですが、未婚の女性が子どもを生むということは石打ちの刑に値するほどの罪と言われる時代、少女マリアと婚約者のヨセフが、神から託された一人の子どもの命を守り、ともに生きていくことを決意する場面でもあります。  最も暗く貧しい場所で生を受けたイエスとその家族は、命を狙う時の権力者の手から逃れて、遠く見知らぬエジプトまで逃げなくてはならない運命をも背負います。この家族の姿は、2000年以上経った今も、戦禍に逃げまどいながら、大切な子どもの命を必死に守ろうと生きている多くの人々の姿に重なります。

 そうやって人間の痛みや苦しみのさなかに飛び込んだ「神の子」イエスが命をかけて伝えたのは、どんな人も神の前には等しくかけがえのない存在であること、社会の中で小さく弱い立場に置かれた人々に寄り添うこと、互いに赦しあい、愛し合うことでした。  

このクリスマスには、今も悲しみ、苦しみの中にいる多くの人々に思いを馳せ、子ども たちも中心にして互いを大切に思い合う平和な世界が訪れるように祈りたいと思います。