園だより

「まきばのかぜ」

2019年5月

園長 大沢千佳子 

『みたから、つくれたんだよ!』

先日、一面の新緑に会いたくなり、桧原村そして奥多摩へと車を走らせました。
美しい緑の山道はいつ終わるともなく続き、澄んだ渓流の川面には木漏れ日が降り注ぎ、風薫る中歩く路傍には、卯の花が可憐な花を咲かせていました。空青く、山青く、自然の息吹を感じるしあわせな一日でした。5月。いのち輝く季節を迎えています。

 長い連休を挟んだのでずっと前のことのようですが、4月、チューリップの子どもたちは、晴れて1階の住人となりました。ちっとも心は晴れてなんかいないよ、2階でずっといたかったと全身で表現している子どもたちもいます。新しい場所が居心地のいい居場所になっていくには、その子自身がそう感じるまで待たねばなりません。ふぁふぁと虚空に浮いている足が、必要な時間を経て地に着けば、大丈夫、自由に歩いていけるのです。
つき組になったN君も、只今自分の居場所を自分のペースで模索中。私を見つけると、手にブロックをもって寄ってきて、『これ、○○なんだよ。』とてもシンプルな形ですが、先の流線型はしっかり表現しています。『いいのができたわね。自分で作ったの?』『うん!』『みたからつくれたんだよ。みなかったときはつくれなかったんだ。』
あこがれのホンモノの電車に出会った時のN君の目の輝きが見えるよう。その時の感動と記憶を一生懸命一つのカタチにした大切な作品でした。 

私は、3月の卒園式でこう話していました。『まきば保育園は、自分の目で見る、自分の耳で聞く、自分のこころで感じる、自分の頭で考えることを大切にしている。』木漏れ日のあの輝きも、たんぽぽの綿毛の飛ぶさまも、土のひんやりとした冷たさと手になじんだ時のあたたかさも、小鳥たちのざわめきも。けんかをした時、誰かを心配したり、喜ばせようと思った時の心持ちも、全身で感じ、考えてほしいと願っています。
保育園は、家族以外の多くの大人と子どもと出会い育つ場所。『まきば』には、手の届くところに沢山の小さな命が息づいています。子ども達は沢山の体験を通して、日々学んでいるのです。それは、利己の目的ばかりを追うのではなく、他の誰かの幸せを考え、支え合って生きていくべきだということを、何が本当に人を幸せにするのかを考えることにつながっていくのだと思っています。

 上野千鶴子さんは大学の入学式祝辞で、若者たちにこう語りかけました。
『あなたたちのがんばりを、自分が勝ち抜くためにだけに使わないでください。。。強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください』多様性を認める寛容さや弱者の痛みを分かつ想像力が、これからの時代を担うひとり一人に求められているのです。

今月もどうぞおすこやかにお過ごしくださいますように。

◆バックナンバー
2019年3月号 まきば保育園 園だより.pdf
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