園だより

「まきばのかぜ」

2019年1月

園長 大沢千佳子 

まきばの暮らし

すでに雪を抱いた月山のふもとに広がる庄内平野。鳥海山が悠々とした姿をみせ、目の前には日本海。一日二組だけを旬の地のものでもてなす一軒の宿。訪れたのは晩秋でした。
農事は一年に一回だけの勝負。やり直しがきかない。だから毎日毎日思いをこらし、田を耕し、畑を耕す。光が稲穂を黄金色に輝かせる時もあれば、厳しい自然の力に打ちのめされる時もある。そんな日々から生まれた今年最後という秋茄子も、ゆっくりと時間をかけて味が浸みこんだあめ色の大根も、湯気の上がる味噌汁、ほろ苦い蕗味噌、真っ白なご飯、交わされる会話、そのすべてが限りなくやさしくて、女主人の心映えの美しさにつつまれた幸せな時間を過ごしました。遅い春から始まり、短い夏、そして収穫の秋、日本海からの寒風に地吹雪となる冬。四季の移ろいの中で生まれるかの地の暮らしに思いを馳せた時、なぜか、遠い昔、台所に立つ母の小気味よい包丁の音を聞きながら、ちゃぶ台を拭き箸とお茶碗を用意したこと、傍では長火鉢にかけた鉄瓶がふたを揺らしながらシュッシュッと音を立てていた冬の日が懐かしく思い出されたのでした。心の中に今もある、ささやかな私の暮らしのかたちなのかもしれません。

「暮らし」 そこに生きる人たちの温もりが感じられ、その人たちの生き方が伝わってくるのが「暮らし」です。そこにはその場所を大切にしたいという思いがあります。保育園は子ども達にとって生活の場と言われて久しいけれど、私は「暮らし」だと思っています。
「まきばの暮らし」には、四季折々の景色があり、自然がつくりだす美しい色彩があります。
今日そら組から、おすそ分けがありました。まきばに降り注いだ太陽の光がくれた、やわらかな橙色の季節外れの夏蜜柑。ひと房口にした途端広がった甘酸っぱい味。きっと子どもたちも忘れないでしょう。
「まきばの暮らし」には、友だちや先生たちと出会い,分かち合う時間があります。時に絵本を手に取りほっとする時間も。心を込めて用意された毎日の給食に力をもらい、まきばの暮らしと溶け合いながら、子どもたちは日々小さな物語を綴っているのです。

今年も変わることなく「まきば」が子どもたちとその家族、ここで働く人たちにとってかけがえのないあたたかな居場所であってほしいと願った新年。
日々成長している子ども達は、毎日変わり新たな自分と出会っています。その姿を見守り続けるために、私たち大人も同じ場所に留まっていることなく,日々変わっていきたいと思います。「まきば」がこれからもずっとあたたかな居場所であり続けるために、「まきばの暮らし」をまきばらしさを失わず続けていくために、成長する私たちでいたいと思います。

新たに迎えた年が、皆様にとってより良い一年となりますように。

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