2026年度7月園だより
ダンゴムシが教えてくれること
園長 清田 悦子
雨あがりの日、まきばの庭の花壇を囲むレンガはどんなに直しても次の瞬間にまたひっくり返されてしまいます。そのわけは「ダンゴムシ博士たち」の飽くなき探究心。手に持った緑や黄色のバケツには、大小さまざまなダンゴムシやミミズたちが数十匹うごめいています。「おぉ、よくみつけたねえ...ダンゴムシはどこにいたの?」「石とか葉っぱの下だよ」「濡れてるところにいるの」「この子、ダンゴムシの赤ちゃん。ダンゴムシのママは背中に黄色い点々がついてるんだよ」
この4月に入園したばかりの3歳のKくんもダンゴムシに夢中。「ねえ!このダンゴムシ、半分だけ白いよ!」その声を聞いて急いで駆け付けた年長のIくんが「だっぴしてる!」と教えてくれました。保育者といっしょに図鑑を調べたら、ダンゴムシは7回も脱皮して大人になるんだそう。「ダンゴムシって何をたべるの?」「葉っぱとか、土とか」「コンクリートも食べるんだって」「え~っ?硬くて美味しくなさそう!」ダンゴムシが子ども同士をつなぎ、保育者も交えて楽しい話が弾みます。
子どもたちの中には、まだ玩具と「いのちあるもの」の違いが分からず、ダンゴムシの入ったバケツに水をいれてしまったり、ミミズを強くにぎってしまう子もいて、そばにいた年上の子どもから「そんなことしたらおぼれて死んじゃうよ!」「ミミズのお父さんかもしれないんだからかわいそう...」と言われる場面もあります。手のひらの上で動く「いのちあるもの」の不思議、生き物のいのちが目の前で終わってしまったときの気持ち。AIでたくさんの情報が簡単に手に入る時代にあっても、物静かで優しい虫たちが教えてくれるのは、経験を通してしか分からない、かけがえのない大切なことです。
庭に出られない雨の日、2才ちゅうりっぷのお部屋では折り紙とテープで何かを夢中になって作っている子どもたちの姿がありました。普段、おでこを地面にくっつけるようにしてダンゴムシを探している子が、「ダンゴムシつくりたい!」と言ったことをきっかけに、保育者といっしょに折り紙をじゃばらに折り、丸めた紙を入れ、テープで貼り、足をつけて完成!続けてお母さんやお父さんのダンゴムシも作っているのです。
子どもたちが出会うこの世界の「不思議」と、もっともっと知りたいと思う探究心。「好き!」「面白い!」を通して生まれる子どもたち同士のつながり。手のひらの感触や実際の体験が心の中で熟成されて生まれる想像力・創造力。子どものなかに生まれながらに備わっている「その子だけの種」が芽をだし、のびのびと育っていってほしい。子ども同士が繋がり、世界をどこまでも広げていってほしい...という願いを持ちながら、目の前の子どもの姿に合わせて環境を日々工夫し、創り出している保育者たちがそばにいます。
学校帰り、ランドセルをおろした卒園生が「小学校の校庭にはまきばみたいに虫がいないし、つかまえる時間もないんだ」と言って、園庭に飛び出していきました。まきばの子どもたちの身近に、日々違った顔を見せてくれる豊かな自然と、好きなことをとことん遊び込める自由な時間があることを幸せに思います。 子どもたちがいまかいまかと待ちわびているセミたちも、そろそろかなと準備をしているところでしょう。光と水と緑、子どもたちの歓声の弾ける季節がすぐそこまで来ています。