2026年度5月園だより
2026年度 園だより5月号
子どもと「歩む」暮らし 園長 清田 悦子
「ねぇ!!ちょっと来てー!」と、庭から呼ぶ大きな声。「にじが、木のてっぺんからはえてる!」急いで庭に出ると、たしかに、ブランコのかかっているエノキの木のむこうに、くっきりと二重の虹が!朝から降り続いた雨がうそのように、今は抜けるような青空にさわやかな翠の風が吹いています。ちょうどお迎えにきた何組かのお母さん、お父さんと子どもたちがその場で立ち止まり、遅番のお部屋の子どもたちも窓から同じ空を見上げています。 だれかが思わず口ずさんだあの歌が、子どもたちに広がっていきます。
♪ ラ・ラ・ラ 虹が虹が 空にかかって 君の君の 気分も晴れて
きっと 明日はいい天気 きっと 明日はいい天気 ♪
5月、大人も子どもも、新しい生活に慣れるまでは気持ちが慌ただしく、走り続ける心の疲れも重なるころ。 そんな時こそ「少し」「止まる」と書いて「歩む」。子どもといっしょに虹のかかる空を見上げたり、足元の小さな花や虫に目を留めて、言葉を交わしながら「歩む」。家事や仕事に忙しい手をちょっとだけ止めて、子どもの目を見て、呼びかけに応える。子どもの食べている傍らで、大人も一緒に「おいしいね」と食べる。そんな風に子どもと一緒に「歩む」何気ない日常のひとときは、子どもの深い安心感となり、大人にとっても、心の深呼吸となるのではないでしょうか。
年々、時間の流れが速くなっていくと感じるのは私だけでしょうか。様々なテクノロジーが身近にあって生活はより便利になっているはずなのに、毎日溢れるような情報の海を泳ぎ、常に分刻みで「○○しなければ...」と、 せき立てられるような感覚があります。子どもたちも例外ではありません。小さな画面から音と光と情報が与え続けられたり、そばにいる大人の時間に合わせて次から次へと指示が与えられることに慣れてしまうと、子どもはやがて自分の心で感じ考えることを諦め、誰かが答えを与えてくれるのを待つようになるのではないかと思います。
けれど、一生の内でこの幼い数年ほど柔らかな感性で世界を感じ、想像の翼をのびのびと広げられる時期はありません。だからこそ、幼い子どもの暮らしは、自然の季節が巡るゆったりとした時間の流れの中で、思う存分、自分の目や耳や心を使ってこの世界の不思議を見つけ、手を動かし、試行錯誤しながら何かを創り出す 楽しみ、様々な子ども同士が繋がりながら育ちあう喜びを保障するものでなければと思います。
生活のさまざまな場面で、子どもが「早く上手にできるように」なる方法を教え急ぐよりも、大人の暮らしの傍らで、あるいは子ども同士の関わりの中で、子ども自身が見よう見まねでも「やってみたい」と思う気持ちが生まれる環境を整えることが大切だと思っています。また、大人が先回りして子どもが困らないように手引きするのではなく、困ったときには子どもが「困った」「助けて」と言えるような関係を築いていきたい―そうすることで、その子どもも、周りの子どもたちも、安心して、一緒に育っていくと思うのです。
子どもの歩幅でいっしょに「歩む」暮らしを、これからもどうぞ、ごいっしょに。