2025年度7月園だより

           Pay it forward  〜恩送り〜             

 園長 清田 悦子

  毎朝まきばの門をくぐると、一番最初に子どもたちを出迎えてくれる、変わらぬ二つの笑顔がありました。10年間、雨の降りしきる日も、凍えるような冬の朝も欠かすことなく、家から  2時間の道のりを通って、不安に泣く子どもたちとそのご家族の心の拠り所となってこられたお二人の先生の姿に、私たちは学び、励まされ、導かれてきました。 保育園の立ち上げから今まで、大きく温かなまなざしで子どもたちと響き合い、キリスト教基盤に立つまきばの保育の礎を確かなものとして築いてこられたS先生。保育のみならず調理室・子育て支援の場においても、いつも穏やかでおおらかな笑顔で、大人が子どもに真摯に向き合うことの大切さ、専門職として常に謙虚に学び続ける姿勢を示してこられたK先生。敬愛するお二人の先生方が6月末、まきばを「卒園」していかれました。

50年来、数えきれない子どもたちのすぐ傍らで生きてこられた思い出が綴られているお手紙の最後には、こんなことが書かれていました。「一番うれしかったのは、子どもの笑顔です。  何かに挑戦する時、夢中になってやり続ける時、できなかったことをやり遂げた時、うまく言えない気持ちを懸命に伝えてくれた時。 あぁ、楽しかった! 皆さんも、子どもと思い出をどうぞたくさん作ってください。そして最後に、「あぁ、楽しかった!」と言ってください。」

"Pay it forward"ということばがあります。お世話になった人に、感謝の気持ちを込めてお返しをするのが"Pay it back"(恩返し)なら、だれかから頂いた宝物への感謝を、下さった人に返すのではなく、隣の人、次の人に手渡すのが"Pay it forward"(恩送り)というそうです。

 そして手渡された人は、また次の人に「送っていく」ことで大切な宝物が広がっていくというのです。 わたしたちに手渡された宝物がさまざまな形になって子どもたちとの暮らしに溶け込み、子どもたちが、"生まれてきたこの世界はなんだか温かくて安心なところ"と思えますように。けんかや葛藤を乗り越えながら、子どもたちが心の底から笑い合うような瞬間を見守れますように。子どもたちといっしょに、友だちの喜び、悲しみや痛みに気づき、分かち合うことができますように。そんな風にずっと"恩送り"をしていけたら、と思うのです。