自分の世界が広がる機会―運営委員会やグループ「アステル」などで活動

東京YWCAの会員は、公益目的事業の運営・実施にボランティアとして自主的に参加します。そして会員の交わりの中で社会に目を向け、心豊かな生活を過ごすために会員グループを作り、自主的に運営しています。

story_shimizu01.jpg今回ご登場いただくのは、東京YWCA会員の清水智子さんです。東京YWCA会員グループ「アステル」での活動のほか、現在は、東京YWCAの事業について理事会に意見を具申する役割をもつ運営委員会や、平和に関するキャンペーン・イベントを担う平和と正義委員会の委員もされています。活動のきっかけや現在の思い、そして清水さんご自身の変化などを伺いました。
(写真は、東京YWCA会館にて)

―東京YWCAに出会ったきっかけを教えてください。

清水さん:
 今、中学生の娘が東京YWCAのまきば幼稚舎(※注)に入園したのがYWCAとの出会いです。その頃、園があった国領センターで近現代史の連続講座があり、講師は高校の歴史の先生をしているまきば幼稚舎の保護者でした。聞きに行った保護者も多かったのですが、知らないことが多すぎることに衝撃を受けて。特に第二次大戦後から今に至るまでを全然知らないと思って。その講座をきっかけに母親仲間で「学校では教わらなかった戦後史を勉強したいね」と生まれたのがグループ「アステル」で、私は「一緒にやらない?」と誘ってもらったんです。(※注 当時。現在は、認可保育園「まきば保育園」。)

気になることを、何でも気がねなく話せる場所
母親として、社会の一員として

―アステルは2005年以来、活動を続けていますよね。

清水さん:
 当時は同じ年頃の子どもを持つ母親どうし、子育てのことも話せる、子どもにまつわる社会のことも気になる、食べ物も気になる、どうなの?って、みんなでおしゃべりできる場所だから続いたのではと思います。テーマを決めた勉強会もしつつ、子どもや子どもに関する社会のことなどを気がねなく話して、メンバーも途中入れ替わりながら、今に至ります。
 日々の生活の中だと、学校のお母さんとはこんな話はできないよね、とか閉塞感みたいなものがあるけれど、ここ(アステル)なら話せるという安心感があります。たとえば今、子どもの教育では道徳が教科になろうとしていて、実際に教科書を読んだお母さんは「これでどんな授業をするんだろうと疑問に思う」「色々な価値観を押し付けてくる感じがする」って。考える力を養うのではなく、「こう考えなさい」とされるのではという危うさ、そうした中で子ども達が育つのは怖いよね、と皆で言い合えます。
 今は、子どもが大きくなったこともありますが、3.11の震災以降、母親だからというよりは、ひとりの人間として、社会の一員として、今は何を考えなきゃいけないんだろうって。そうした気持ちも含めて、アステルに来れば何でも話せるんです。

―現在のアステルの活動について教えてください。

清水さん:
 社会や子ども、平和に関する話題で気になることを持ち寄り、話し合っています。また、3.11の震災と原発事故を受けて、抱えた不安や困難を共有して考えていけたらと寸劇を作成して、東京YWCAのイベントや、地域の市民団体や自治体のイベントでも発表しています。メンバーの中に演劇関係の人がいて、色々な人の思いや意見をきく手段のひとつとして、寸劇というものがあるよ、と。最初は本当に手探りでしたが、2年目からはワークショップもして、たとえば言いづらいこともシナリオという形で自分ならこの物語をどうするか、だったら言えるよね、とか。今年は寸劇を見てもらった上で、電気やエネルギーについて考えたり、時間とともに内容を変えながら、続けていきたいです。

活動の場が広がり、見えることも広がる、出会いも広がる

―国領センターでの委員や、東京YWCA全体にかかわる運営委員などをされていますが、その中で気づいたことや、印象に残っていることを教えてください。

清水さん:
 国領センター委員では、娘が卒園するときに委員の皆さんに声をかけられてなったのですが、イベントの企画など、こんなに最初から色々やっていたのかと驚きました。それをベテラン委員の方たちは、ひょうひょうとやっているのがすごいなと(笑)。それと、考えたことを実現するには本当に多くの人の手が必要で、いろんな関わりの人がいるからこそ実現できるのだと気づけたのもすごく大きかったです。
 運営委員は2013年からですが、今までアステルも含めて国領センターを中心に活動してきたので、東京YWCAの様々な事業のことを知ることができ、人との出会いも広がりました。運営委員になったことは、平和と正義委員会にもかかわるきっかけになりました。

―活動の場が広がったことで感じることはありますか?

清水さん:
 自分の知らなかった外の世界で、思いを持って様々な活動をしている人がいるんだと、そういう人たちがいるんだったら、自分ももうちょっと頑張れるな、とか。あと、外から見てYWCAって意外と知られていないとか(笑)。そしてYWCAの芯というのかな、平和とか命、、、人間としての尊厳、その尊厳を保つためには平和が必要だよね、みんなが平和に生きていくんためにはどうしたらいいんだろう、そういうことを本当に考えて色々な活動がされてきて、今のYWCAがあるというのが、自分なりに見えた気がします。

―YWCAってどんなところだと思いますか?

清水さん:
 懐が深いところだと思います。キリスト教基盤の団体だからクリスチャンでないといけないとか、私も最初そう思っていたんですけど、全然そんなことないです。関わり方もたとえば保護者としてとか、少しの時間しか関われないとか、色々な立場の人を受け止めてくれる、懐の深いところだなあって。
 本当にだれでも、自分の興味がある活動があったら、のぞいてみたらいいんじゃないかな、面白いところだよ、っておすすめしたいです。たとえその人が男性でも(笑)。

受け止めてくれる人がいる場所で、自分も変われる
これからも、子ども達に残したい社会をつくるために

story_shimizu02.jpg―東京YWCAに関わる中で、ご自分が変わったと思うことはありますか。

清水さん:
 人からは、とっつきやすくなったと言われますね。YWCAでの経験の中で、意見を言ってもいいんだ、大丈夫、というのがわかったから、人に対して壁を作らなくなったと思うんです。その中で、自分の思っていることや考えていることは言っていいし、伝えるべきだというのを教えてもらえたし、そういう考え方になりました。
 それと、もともと内向きな人間だったんですけど、自分からもっと積極的にいろんな人とつながろう、って思うようになりました。

―清水さんにとって、東京YWCAってどんな場所ですか?

清水さん:
 色々なきっかけ、機会を与えてくれるところかな。アステルも、委員会もそうです。やってみて、これは思ったより手ごわいぞ、と思うこともありますが(笑)、自分のためになったという実感があるので。東京YWCAに関わっていなかったら、今はまた違う人生だったと思いますね。

―今後の目標など教えてください。

清水さん:
 せっかくできた外とのご縁を大事にして、自分の考えを深めたり、活動できたりしたらと思います。
 将来、子ども達に残したい社会を考えると、平穏な暮らし、疑心暗鬼にならないで安心できる社会を残したい。そのために何をしていけるかは、正直手探りですけど。どんな考えの人ともケンカじゃなく話し合いができればな、そういう感じの世の中になればなって思っています。



YWCAでの関わりが続いていることについて、「居心地がよかったからだと思います、それに尽きます」と清水さん。
「誘われたから、声をかけてもらったからやってみた、それを繰り返しているうちに、自分の世界が広がった」と語り、自分の変化を成長としてとらえている姿が、とても自然体な清水さんでした。

 東京YWCAは設立以来、女性や、子ども、障がいなどの社会的に弱い立場の人々のために働きを続けてきました。そのどれもが長い歴史を持つものであるあることと同時に、「会員」によって支えられてきたものであることが大きな特色です。また、「生涯教育」という言葉が広く用いられるようになる遥か以前から、女性が自ら成長し、リーダーシップを養成する場となってきました。

 東京YWCAの会員は、YWCAの趣旨に賛同する人は、どなたでもなることができます。会員には4つの種類があり、18歳以上の女性は成人会員、18歳未満の女性は年少会員として、東京YWCAのみならず、世界YWCA、日本YWCAの会員となります。18歳以上の男性は成人会友、18歳未満の男性は年少会友です。会員には、東京YWCAおよび日本YWCAの機関紙が送られます。
会員手続きに関してはこちらをご覧ください。