ひびきあう心

2017年10月
副園長 瀬口哲夫

各保育園・幼稚園は、その年の子どもの傾向によって、「身体を動かすことを楽しむ」「親子で楽しむ」「それぞれの挑戦」などのテーマをつくり、運動会に臨みます。今年、まきば保育園は「一人ひとりのストーリーを大切にする運動会」を目指しました。運動会が近づくにつれて俄然テンションが上がる子もいれば、いつもと違う雰囲気に押しつぶされそうになって、「お腹がいたい。やりたくない。」という子もいました。そうした子どもたちが"運動会って何か"が次第に分かり、自分でそのプレッシャーをはねのけていく姿に思わず"がんばれ!"と言いたくなるところですが、余計に緊張してしまう子もいて、どのように子どもの気持ちを奮い立たせたらよいかと悩んだ保育士もいました。
運動会当日、子どもたちの笑顔のなかで顔をこわばらせていたT君は、大きな音も、色とりどりの旗の色彩も苦手でした。運動会はT君にとって、本当に楽しかったのだろうかと心配しましたが、次の日から、「先生、よーいドンして」と言うようになったのです。 保育士が「よーい」と声を出すと「ちがう、ちがう」と言います。どうも「きをつけ...よーいドン!」と言ってほしかったようです。もう一度、「きをつけ!」と言うと、T君はにっこりして手足を伸ばし"きをつけ"をしました。運動会をきっかけにして、掛け声で走りだすことが楽しくなったT君。また一つ、やりたいことが増えました。運動会は次の物語をつくるきっかけになったのです。
どこまでも突き抜けるような青空、東京YWCAの先人から引き継いだ木々の緑、見たとたんに走りだしたくなる広々とした芝生。その広場で開かれた運動会。私たちはしばしば運動会で何が出来たかを評価しがちですが、運動会までのストーリーもあれば、運動会から始まるストーリーもあるのです。"まきば"での物語はこれからも続いていきます。