ひびきあう心

2024年1月
副園長 瀬口哲夫

 2024年1月2日、羽田空港でJAL機の大事故が起きました。機内の窓から見える炎、侵入してくる煙、ドアをあけてという逼迫した乗客の声、子どもや赤ちゃんを抱きしめるお母さんの姿が映像として伝わってきました。どれほど怖い思いをされたことでしょう。全員が無事に脱出できたことがなによりでした。機長と連絡が出来ず、指示が得られず、機内放送が使えないCAの方々の対応が印象的でした。緊急時の対応はマニュアルもあり、繰り返し訓練もされていたのでしょうが、迷いや不安を見せずに、「姿勢を低くして!」「荷物を出さないでください!」と繰り返す、大きな、はっきりとした声に「不安に陥っている目の前の乗客の皆様を、この私が必ず守りぬく」という決然とした意思を感じました。機長の指示に頼らず、現場の状況をみてドアの閉鎖と開放を自分自身で判断、決断されたことは、同じように"いのち"を預かる保育士として見習うべきものでした。一方、乗客もよくCAさんを信じ、パニックを押さえて指示に従った乗客の方々も素晴らしいと思いました。
映像のなかで最も私の印象に残ったのは、CAさんが、赤ちゃんを抱いたお母さんにまずかけた「だいじょうぶですよ。姿勢を低くしてくださいね」という優しいひとことです。私たちは生きるなかで、思わぬ事態に遭遇し、混乱し、自分を失いそうになることがしばしば起きます。子どもを含め、人は思わぬことが起きると、パニックを起こします。その時に最も必要なことは、傍に人がいて、その人が混乱せずに、「大丈夫。私があなたと一緒にいますよ。」と言ってくれることだと思います。それによって、人は立ち上がり、歩み出すことが出来るのです。「大丈夫」という言葉には、それだけの強さがあるのだと思います。